アレルギーっ子の子育て 第9話:クラスのみんなへ書いたお手紙

アレルギーっ子の子育て 第9話:クラスのみんなへ書いたお手紙

小麦と卵の食物アレルギーとアトピー性皮膚炎にぜんそく。3つのアレルギー症状を抱えた息子を育てあげたお母さんの奮闘記と先輩ママとしてのアドバイスです。


春は別れと出会いの季節。食物アレルギーの子を持つ親にとって、入園・入学や進級は喜ばしいことだが、お友だちや学校や先生など「新しい環境がどのようになるのかな」と不安な時期でもある。

幼稚園はお弁当で乗り切ったが、小学校は前に書いたように、完全にお弁当にするのではなく、献立の中で食べられないものの代わりを作って持って行くことにした。そのため、息子がお友だちから変に思われないように、「学級だより」にお手紙を載せてもらった。
これは小学校へ入学する直前に、学校へ相談に行った時、「みんなにも理解してもらえるお手紙を持って行こう」と思って10分くらいで書き上げたものだ。


保護者のみなさまへおねがい

 給食が始まります。子どもたちにとってみんなと食べる給食は楽しいものだと思います。
 出席番号16番の○○は生後5カ月の時から重症の喘息で入退院をくりかえしてきました。アレルギーを表わす数値IgEというのが、大人の正常値が250に対し、○○は6800ほどあります。小麦と卵のアレルギーがひどく、生まれてこのかたパン類、麺類、ケーキ類を食べたことがありません。病院でも負荷テストといって少量の卵や小麦を口に入れて試しましたが、喘息やじんましんが起きてまだ食べることができません。
 そのため、給食は食べることができるものは食べて、あとは自宅からお弁当を持って行く形になります。学校側や先生などに大変ご迷惑を掛けることとなります。幼稚園でもそうしてきましたが、クラスメートが温かく見守ってくれました。
 小学校へ入学しての不安は、給食でみんなと同じものが食べられないことでした。何で違う物を食べるのか、何でみんなと一緒にパンや麺を食べないのかと不思議に思われるお子さんもたくさんいらっしゃるかと思いますが、食べると喘息がでたりじんましんが出たりして、身体中が赤くかゆくなってしまうから食べられないということを、お家でもお子さんに説明していただけたら幸いです。いろいろとご迷惑をお掛けするかもしれませんが、みなさまの温かいご理解、ご協力をお願いしたいと思っております。どうかよろしくお願いいたします。


このお願いの文章を担任の先生が「アレルギーのため、給食のうちの一部のメニューしか食べられないお友だち○○さんがいます。食べられないメニューの分はお家から持ってきます。それは仕方がないことなのだということを、他の1年3組のお友だちにはわかってほしいと思っています。保護者のみなさまも理解していただくとともに、各家庭で、子どもたちに話しておいてほしいと考えています」と学級通信に紹介してくれた。
「『仕方がないことなのだ』ということを理解してほしい」という言葉が、変な同情でなく、先生がしっかりと息子を受け入れてくれていると感じた。
初めての保護者会があった時に、保護者のみなさんの前で改めてお願いをしたら、「お手紙を読んで子どもに話しましたよ」というお母さんが多く、勇気付けられた。

私のアレルギー関連で知り合った友だちは、みんな学校や先生と密に連絡をとっている人ばかりだったが、中には学校に何も言わずに、子どもに対してだけ「気を付けて食べられないものは食べないように」と言う親もいるらしい。

学校の先生をしている友だちから聞いた話だ。
親が「うちの子は、卵が食べられないけれど、子どもが自分でわかるから大丈夫だ」と言っていたそうだ。ある日、ふりかけに卵の成分が入っていたのに、それに気付かず、家に帰ってアレルギーの症状が出たので、学校側に連絡があったという。
私の友人である先生と保護者はお互い話し合って、「今後は協力していきましょう」ということになったそうだ。

保護者によっては「『子どもがアレルギーだからといって特別な目で見てほしくないから』と学級だよりに手紙を載せるなんて、とんでもないことだし、隠したい」という人もいた。
私も子どもが特別な目で見られるのは嫌だと思うところもあったが、知らせておかないと給食などで間違って食べて具合が悪くなったり、最悪の場合は救急車で運ばれたりする場合もある。学校側や先生に協力をお願いして、子どもの学校生活が心配なく過ごせるようにしたいと思っていたので、他の保護者の方にもオープンにして助けてもらった。
困っていることを正直に話して助けてもらうのは勇気がいることかもしれないけれど、人の優しさに感動することもたくさんあった。

このお願いのお手紙は、息子が小学校4年生まで続いた。毎年クラス替えもあったことで、息子にアレルギーがあることを知ってる子が多くなったし、5年生なったら息子が自分で友だちにも話せるようになったからだ。そして、この手紙の文章は、他のアレルギーを持つ方にも学校入学時に利用してもらえるようにして、多くの人に使ってもらった。10分で書き上げた手紙だったので、文章自体はつたないものだったが、心から湧き出た気持ちを書いたもので、今読んでも不思議な感じがする。
小学校入学前の不安を吹き飛ばそうと一生懸命だったのだろうな、と思う。

●「アレルギーっ子の子育て」第10話はこちら

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篠澤真喜子(しのざわまきこ)さん

篠澤真喜子(しのざわまきこ)さん

20代の娘と息子を持つ母。乳児のころから食物アレルギーとアトピー性皮膚炎とぜんそくを患っていた息子を育て上げた経験を持つ。その経験を生かして、エフコープの店舗で年4回開催される「食物アレルギー交流会」などで、アレルギーっ子ママの先輩として、今悩んでいるお母さんたちのサポートなどを行っている。