アレルギーっ子の子育て 第10話:宿泊先での食事はどうするか
小麦と卵の食物アレルギーとアトピー性皮膚炎にぜんそく。3つのアレルギー症状を抱えた息子を育てあげたお母さんの奮闘記と先輩ママとしてのアドバイスです。
アレルギーっ子のための食事作りは毎日のことなので、いろいろな工夫や経験を重ねてそれなりに慣れてくる。しかし、「同じものばかり食べさせてるかな」とか「栄養は足りているかな」と悩みは尽きないものだ。
また、自宅で作る食事やお弁当はどうにか対応できるが、よそへ宿泊する場合、工夫が必要になってくる。
夫の両親と同居していたので、最初のお泊りは私の実家だった。実家に息子を連れて帰る時は、小麦が使われていない「ひえ醤油」などの調味料を家から持って行く。私の母は料理が得意だったので、息子用に卵と小麦を除去した食事を作ってくれた。「面倒くさいね」と言いながらも、日々、私が家族5人分と息子の除去食を作っていることに「大変だね、実家にいる時くらいゆっくりしなさい」と言ってくれた。
次に泊まりに行ったのは、初めての家族旅行の時だ。
息子が3歳の時、ぜんそくの発作も落ち着いてきたので思い切って関東の大型遊園地に行った。現在はアレルギー対応が進んでいることで有名な場所だが、当時はそうでもなかった。
朝食はバイキングで、卵と小麦を抜くのは和食にすることで乗り切れた。昼食は、ごはんとのりをもらっておにぎりを作って持っていった。
夕飯は、ホテル内にある和食の店ですきやきを食べたのだが、「卵アレルギーだ」と申し出ると、卵をかき混ぜるお箸を別々に用意してくれて、息子用に取り分けてくれた。
ホテルには2泊したのだが、次の日に行った時はお店の人が覚えていてくれた。そして、「『卵と小麦を除去したお膳を作りましょうか』と料理長が言ってますが、いかがでしょう」と言われたので頼むことにした。すると、とても手のこんだ素敵な和のご膳を作ってくれた。息子が一人で全部食べ切ることはできなかったので、家族で分けていただいた。料金は高かったが、いつも息子の分はお弁当持参で、飲食店では肩身の狭い思いをしていたため、初めて除去食に対応してもらったいい思い出になった。
幼稚園でのお泊り保育は、1泊2日。初日のお弁当は朝から持たせるのでいつもと同じでいい。しかし、当日の夕食のメニューは用意が必要だ。カレーと唐揚げと聞いていたので、レトルトのアレルギー用のカレールーと小麦抜きで作った唐揚げを冷凍し、先生に預けた。
2日目の朝食は、ごはんとのりと納豆がメニューにあったのでそれを食べるようにした。事前に食事のメニューを教えてもらったので、チェックすることができた。
ぜんそくやアトピー対策などのために、寝具などにもそばがらの枕などが使われてないかどうかも調べてもらった。
小さな幼稚園だったので、先生方が全員息子の状況を理解してくれて、対応してもらえたのも良かった。担任の先生はぜんそくの経験者で、他にもアトピー性皮膚炎だった先生もいたため、より理解をしてくれたし、事前の打ち合わせにも快く応じてくれた。
一番心配していた小学校の修学旅行は、旅行代理店もホテルもアレルギーの対応をしてくれる所だった。以前は卵が少し混ざっただけでも反応が出ていたが、6年生になるころには、混ざったものは大丈夫になっていたので助かった。夕食は卵抜きの食事だったので、朝食は卵焼きだけ気をつければ良かったのだ。
担任の先生からは「旅館で大騒ぎしていたので叱った」と報告があった。アレルギーの心配よりワンパクになった心配をしないといけなくなっていた。
中学の修学旅行は、みんなですき焼きを作って部屋で食べることになっていた。他の食事は卵抜きのメニューを選んで食べることで対応できたのだが、すき焼きを食べる時には、他の子たちは生卵を使う。最初に息子用に取り分けておかないと、生卵が付いてしまって危険だったので、先生に「どうしようか」と相談していた。
すると、長女のころからお世話になっていた女性の先生が「お母さん、お任せください。責任もって対応します」と言ってくれた。先生を信頼して「よろしくお願いします」と送り出した。
帰って来た息子に話を聞くと、息子の部屋ではみんな、生卵を使わずに食べたそうだ。それを聞いて申し訳ない気持ちになり、学校に電話をした。先生と話したら、同じ部屋だった生徒6人は、全員が野球部で小学校からずっと息子と仲がいい子たちだったそうだ。みんな、自主的に息子のために卵を使わないようにしたと聞いて、本当にありがたいと思った。
高校の修学旅行では「特別な対応はしないように」と息子から頼まれた。一応、先生に報告はしていたが、「自分で責任を持つので大丈夫です」と伝えた。高校生になると、特別な対応が本当に嫌だったようだ。入学してすぐの宿泊訓練の時、学校にアレルギーのことを伝えたら息子のための立派な朝食が用意されていたそうで、すごく目立って恥ずかしかったそうだ。
「自分で判断できる」というのは成長の証でもあるので、息子に任せることにした。
アレルギーっ子も、成長するに伴って食べられるものが増えて楽にもなるし、環境も変わる。子ども一人で宿泊させる時は、学校側や宿泊先とコミュニケーションをとり、子どものアレルギーに関する情報と食事の内容を確認し合って、親も子どもも不安なく過ごせるようにできたらいいと思う。
最近は、宿泊先や飲食店でアレルギーへの理解が進んでいる。時代とともに変わってきたことをうれしく思っている。
●「アレルギーっ子の子育て」第11話はこちら
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篠澤真喜子(しのざわまきこ)さん
20代の娘と息子を持つ母。乳児のころから食物アレルギーとアトピー性皮膚炎とぜんそくを患っていた息子を育て上げた経験を持つ。その経験を生かして、エフコープの店舗で年4回開催される「食物アレルギー交流会」などで、アレルギーっ子ママの先輩として、今悩んでいるお母さんたちのサポートなどを行っている。