第2回 食物アレルギーになる原因は?

第2回 食物アレルギーになる原因は?

きちんと知って上手につき合うための食物アレルギーの話


食物アレルギーについて知っておきたい基本のあれこれを、食物アレルギー研究の第一人者として知られる国立病院機構福岡病院小児科の医師・柴田瑠美子(しばたるみこ)先生にわかりやすく解説していただいています。今回は、食物アレルギーを引き起こす原因についてお聞きします。

◎過去記事はこちらから。

なぜ、一部の子どもだけが食物アレルギーになるの?

生まれながらにしてアレルギー体質を持っている子どもがいますが、なぜそうなるのかはまだ解明されていません。けれども、その一因として親から遺伝する場合があることはわかっています。両親にアレルギー疾患がある場合、同じ環境なら40〜65%ぐらいの確率で、どちらか一方にアレルギーがある場合は約30%の確率で、子どもにアレルギー体質が遺伝する可能性があるとされています。ですから、もしも両親が花粉症などのアレルギー疾患を持っていたら、子どもには早い時期から注意が必要ですね。

特に、お子さんが乳児期にアトピー性皮膚炎を発症したら、食物アレルギーになる確率は高くなります。

食物アレルギーは最近かなり増えているように感じます。昔はほとんど聞いたことがありませんでしたが…。

生まれながらにして食物アレルギーを起こしやすい体質を持つ子どもは今も昔も変わらず、一定数いるんです。その割合が増えているわけではありません。
ではなぜ、昔はあまり耳にしなかった食物アレルギーが最近増えているかというと、その原因は私たちをとりまく3つの環境の変化にあります。それは、「食環境」と「衛生環境」の変化、「抗生物質の多用」です。

◎原因その1 食環境

まず、食事に注目してみましょう。アレルゲンとなる卵も牛乳も小麦も、そして魚介類ではエビなども、欧米型の食事が増えてきた1960年代後半あたりから日本でどんどん消費が伸びているものばかりです。
同じように、卵や牛乳を使った加工品も増え、インスタント食品にもアレルゲンとなるものがふんだんに使われるようになりました。

つまり、現在の私たちの食生活は、アレルゲンをかなり多く口にしたり触れたりする環境にあるということなんですね。そうなると、もともとアレルギー体質を持った子どもたちは、必然的にアレルギーを発症する機会が増えてしまうことになります。

◎原因その2:極端に衛生的な環境

衛生管理に対して必要以上に神経質になってしまう、最近の“きれい好き”の風潮もアレルギーの原因のひとつです。あらゆる生活用品に除菌を謳ったものが増えたおかげで、私たちの身の周りにはいつの間にか菌が減ってしまいました。本来、人の体には菌に対する攻撃力(免疫反応)が備わっているのですが、極端に菌の少ない環境下では細菌に対する免疫の働きが必要なくなり、今までであれば攻撃する必要がなかった食物やハウスダストなどのアレルゲンを攻撃対象にしてしまうというわけです。

実際、家畜がいる農家などで育った子どもや、きょうだいが多い子どもにはアレルギーが少ないことも報告されています。これを「衛生仮説」といいます。

◎原因その3:抗生物質の多用

最近は予防接種が普及し、病院では抗生物質を多く使用する傾向にあります。実はこれらの薬は病原菌だけでなく、ビフィズス菌のような善玉菌も排除してしまうんです。その結果、感染に対する免疫力を弱めてしまい、アレルギーになるリスクを高めるとされています。

乳幼児の腸内細菌を調べると、アレルギーのある子どもは、腸の中のビフィズス菌が少なくなっていることが報告されています。

母親の食生活が原因ではない

子どもが食物アレルギーと診断されると、ほとんどのお母さんは、『私の妊娠中の食生活に原因があるんじゃないか』と自分を責めてしまいがちです。子どものことを心配するあまり、それまでのご自身の食の嗜好や、妊娠中の食生活などが子どもの食物アレルギーを引き起こしてしまったと考えてしまうのは、仕方のないことかもしれませんね。

でも、これまでの研究の中でアレルギーの発症がお母さんの食生活に関係しているという結果は出ていないんです。
母乳やミルクがアレルギーの引き金になるとも考えられていません。ですから、「私の母乳が原因だったのかも」とか「ミルクをあげていたから乳アレルギーになったんじゃないか」と気に病む必要もありません。

まずはそのことを知ってもらって、アレルギーのある子を持つお母さんたちには、少しでも肩の荷をおろしていただきたいですね。

次回は、食物アレルギーの予防や治療についてお聞きします。

profile

柴田瑠美子(しばたるみこ)先生

医学博士、日本アレルギー学会指導医、国立病院機構福岡病院小児科非常勤医師、中村学園大学栄養科学部客員教授。九州大学医学部を卒業後、九州大学医学部講師、国立病院機構福岡病院小児科医長を経て現職。食物アレルギー研究の第一人者として全国的に知られる。著書に「国立病院機構福岡病院の食物アレルギー教室」(講談社)など。