第1回 食物アレルギーってどんなもの?
きちんと知って上手につき合うための食物アレルギーの話
食物アレルギーは、私たちにとってとても身近な疾患です。わが子に食物アレルギーがある方も、これから生まれてくる子どものことを心配している方も、決して少なくないでしょう。ただ、それだけに、いろいろな噂や間違った情報に惑わされてしまうことも少なくないようです。
食物アレルギーと上手につき合っていくためには、まずは正しい知識を身につけることが大切。というわけで、今回から7回にわたって、食物アレルギー研究の第一人者として知られる国立病院機構福岡病院小児科の医師・柴田瑠美子(しばたるみこ)先生に、食物アレルギーの基本についてお話をお聞きします。
食物アレルギーってどういうもの?
人間にはもともと、体内に異物が入ったら、体を守るためにその異物を追い出そうとする力が備わっています。これを「免疫反応」といいます。
食物アレルギーになると、小麦や卵、牛乳などのアレルゲンとなる食品を食べた際、その中に含まれるタンパク質などの成分を、体が異物と認識してしまいます。本来なら栄養となる成分ですが、急いで体から追い出そうとする力が働き、その結果、体にいろいろな症状が現れてくるのが食物アレルギーです。
体内でどのようにアレルギーが起こるのか、その仕組みを教えてください。
アレルギー素因をもっている子どもが、アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)となる食物を食べたり、皮膚に接触したりすると、子どもの体内でアレルギーを引き起こすもとになる「IgE(アイジーイー)」という抗体がつくられます。「IgE抗体」はマスト細胞という細胞の表面を覆うように付着。マスト細胞にくっついた状態の「IgE抗体」は、次から体内に入ってきたアレルゲンをキャッチして「IgE抗体」と結び付けてしまいます。すると、「IgE抗体」はアレルギー症状を引き起こすヒスタミンなどの物質を放出。さまざまな症状を引き起こしてしまうことになります。
このようにして、子どもの体が食物アレルギーを発症するようになるのです。
主なアレルギーの症状にはどのようなものがある?
症状はさまざまですが、皮膚の場合は、赤くなったりじんましんが出たりすることが多いですね。目が充血したり顔が腫れたりするほか、咳き込んだり、ぜんそくのように喉がゼーゼーしたりと気道に症状が見られることも少なくありません。
嘔吐や腹痛、下痢で苦しむ子どもも多く、ひどくなると、体内のあらゆるところに症状が出て、血圧が下がって意識さえなくしてしまう「アナフィラキシーショックという状態に陥ってしまうこともあります。
どんな食べ物がアレルギーを引き起こすの?
食物アレルギーの原因となる「アレルゲン」にはいろいろな食品があります。特に注意が必要なのが牛乳、小麦、そば、卵、落花生、えび、かにで、これらは「特定原材料7品目」として、食品に必ず表示しなければならないと義務付けられてます。
ちなみに現在、乳幼児では1.卵、2.牛乳、3.小麦の順に。学童の場合は1.卵、2.牛乳、3.甲殻類、4.落花生の順にアレルギーを発症している数が多くなっています。
次回は、食物アレルギーになる原因についてお聞きします。
「第2回 食物アレルギーになる原因は?」はこちら
profile
柴田瑠美子(しばたるみこ)先生
医学博士、日本アレルギー学会指導医、国立病院機構福岡病院小児科非常勤医師、中村学園大学栄養科学部客員教授。
九州大学医学部を卒業後、九州大学医学部講師、国立病院機構福岡病院小児科医長を経て現職。食物アレルギー研究の第一人者として全国的に知られる。著書に「国立病院機構福岡病院の食物アレルギー教室」(講談社)など。