アレルギーっ子の子育て 第5話:アレルギーっ子と学校給食

アレルギーっ子の子育て 第5話:アレルギーっ子と学校給食

小麦と卵の食物アレルギーとアトピー性皮膚炎にぜんそく。3つのアレルギー症状を抱えた息子を育てあげたお母さんの奮闘記と先輩ママとしてのアドバイスです。


アレルギーのある子どもの小学校入学は本当に大きな壁だ。
幼稚園や保育園はアレルギーへの対応をしてくれるところも多いし、お弁当を持たせるのもそんなに苦にならなかったが小学校は給食当番もあるし、やはり幼稚園とは違うからいろいろと心配だった。

入学前の健康診断時に「息子は食物アレルギーがあり、小麦と卵が食べられない」と話をしたら、入学式前に学校へ相談に行くように言われた。教頭先生、養護教諭、栄養士の方と話すことができた。
担任は幸いなことに、2年間長女の担任をしてくれた先生だった。「アレルギー用の給食は作れない」とのことだったので、1カ月に1回、担任と栄養士と私の3人で、献立表の原材料を確認して、食べられるものは給食を食べ、食べられないものは家から持たせることになった。息子が全品食べられる給食の献立は月に4日しかなかった。
その4日間以外は、食べられるものと食べられないものを書いて提出した。先生からも給食の時の様子を教えていただき、まるで交換日記のような連絡帳だった。

みんなと一緒に食べる給食なので、家から持っていくおかずはできるだけ給食と同じようなものを作って持たせた。

“給食あるある”で、麺類とパンの組み合わせが多かったので、パンは冷凍の米粉パンを、うどんやスパゲッティーの代わりに米粉で作られた麺をランチジャーに入れて持って行き、学校で給食用の食器で食べるようにした。
うどんの日に、米粉麺とつゆを一緒にランチジャーに入れて持たせたら、麺がつゆを含んで団子状になってしまい、おいしくなかったそうだ。
アイスクリームが出る日は、家から卵が入っていないアイスクリームを見つけることができず、代わりにシャーベットを持たせたりした。

献立を確認するときにはすべての原材料を確認するのだが、時々「残念!」と思うメニューがあった。例えば、野菜炒め。かまぼこが入っていたのだが、そのかまぼこだけに卵が使われているため、食べることができなかった。そういうメニューもたくさんあった。

出来立てのものを食べるわけではないし、ランチジャーに入れていても、冷めていておいしくなかったものもたくさんあっただろうと思う。けれども息子は、何も文句を言わず、ランチジャーを持って学校に通った。

給食が始まる前に、学級だよりに保護者向けのお便りを載せてもらっていた。
内容は「息子に食物アレルギーがあること」と「卵と小麦が入っている給食を食べられないこと」、「違うものを食べることがあるので、お子さんにそのことを伝えてください」というもの。
そのおかげか、クラスのお友だちは息子を特別視することなく、協力してくれた。その後の保護者会でも状況を説明したが、学級だよりを見ていただいていて、みなさん理解してくれた。

給食の献立に合わせておかずなどを準備するのは、正直、非常に手の掛かることではあった。給食を全く食べずに完全にお弁当を持たせるという選択肢もあったのだが、少しでもみんなと一緒に給食を食べさせてあげたいという気持ちだった。
いつも人と違うものを食べるのではなく、みんなと同じものを食べられるということは、アレルギーの子にとってうれしいことの一つだと思ったからだ。
息子に同じものを食べている気持ちになってほしかったから、不器用ながらも同じような献立になるように、おかずを頑張って作っていたのだ。

しかし、今になって「あのころは、少し頑張りすぎていたかな」とも思う。わが家は夫の両親と同居していたので、5人分の食事に加えて、除去食を作っていた。
食事は毎日のこと。除去食を作るだけでも大変なのに、給食の献立に似せて作ることまでしていたら大変なことだと、当時を振り返ってあらためて思う。そこまでしなくても、息子は気にしなかったかもしれない。

アレルギーっ子を持つ親は、初めはどうしても「同じものを作ろう」と努力して、精神的に追い詰められることがある。
だから、今は若いお母さんたちと話す機会があると、「無理しないでね」と伝えるようにしている。毎日の食事の準備だけでも、十分頑張っているのだから。

●「アレルギーっ子の子育て」第6話はこちら

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篠澤真喜子(しのざわまきこ)さん

篠澤真喜子(しのざわまきこ)さん

20代の娘と息子を持つ母。乳児のころから食物アレルギーとアトピー性皮膚炎とぜんそくを患っていた息子を育て上げた経験を持つ。その経験を生かして、エフコープの店舗で年4回開催される「食物アレルギー交流会」などで、アレルギーっ子ママの先輩として、今悩んでいるお母さんたちのサポートなどを行っている。