うちの子って、もしかして発達障害? Vol.1

うちの子って、もしかして発達障害? Vol.1

メディアでたびたび取り上げられている「発達障害(発達症)」のこと。なんとなく情報が耳に入ってきて「うちの子にもあてはまっている気がするんだけど、大丈夫?」と心配されている方もいるのではないでしょうか。そこで、福岡県嘉穂郡桂川町で「遊びの教室リリー」を主宰されている公認心理師の田中智子(のりこ)さんに、子どもの発達障害について話を聞いてみました。

そもそも、発達障害(発達症)って?

「発達障害」は、医学的には脳の機能障害のひとつだとされています。ですが、それを「しょうがい」であると捉えるよりは、脳のタイプの一つだと理解したほうが、わかりやすいと思います。例えば右利きの人と左利きの人とでは、脳のタイプが違いますよね。それと同じように、発達障害は脳のタイプと捉えてみてください。個性であったり、文化の違いのようなものだと考えてもいいかもしれません

発達障害のタイプ

ひと口に「発達障害」といってもさまざまな特性がありますので、次の4つの個性について説明をします。

●自閉スペクトラム症(ASD)
・コミュニケーションの特性、社会性の特性、想像力の特性
言葉の遅れがある、冗談を本気で受け取る、人との関わりが苦手、視線が合いにくい、相手の気持ちを推測することが難しい、興味関心の幅が狭いなど
・感覚の特性(五感や固有覚、前庭覚)
感覚の敏感さや鈍感さがあり、強い刺激を求めたり、刺激を避けたりする人もいます。例えば
光や音の刺激が苦手、苦手な素材の洋服がある、特定の触感や味が苦手、力加減がわからない、体をゆする、飛んだり跳ねたりすることを好む、姿勢の保持が困難、など

●注意欠如多動症(ADHD)
・多動
じっとしていられない、授業中ウロウロする、など
・衝動性
考えずに行動してしまう、遊具の順番を待てない、挙手して指名されるのを待てずすぐに質問の答えを言う、など
不注意
忘れ物が多い、物をよくなくす、うっかりミスが多い、など

●限局性学習症(SLD)
・聞くのが苦手
単語や言葉の聞き誤りが多い、長い話を理解するのが苦手、など
・話すのが苦手
筋道を立てて話すことが苦手、文章として話すことが苦手、言いたいことをうまくまとめられない、など
・読むのが苦手
単語を読み誤る、文字や単語を抜かして読む、促音(小さな「っ」)拗音(小さな「ゃ・ゅ・ょ」)を発音できない、など
・書くのが苦手
誤った文字を書く、漢字の部首を間違う、など
・計算が苦手
暗算や筆算の位取りが苦手、など
・推論が苦手
算数の応用問題、図形問題、長文読解が苦手、など


●発達性協調運動症(DCD)
・運動能力に偏りがあったり、協調運動が苦手
はさみを使う、ちょう結び、ボールを蹴る、文字を書く、縄跳びが苦手、など

これらの診断名が、一部重なり合っていることもあります。また、たとえ同じ診断名がついていても、特性は一人ひとり異なりますので、100人いたら100通りの個性があると考えてください。

子どもが発達障害かどうか、見分けるポイントは?

もちろん、子どもだから落ち着きのなさやソワソワ感はあるかもしれません。ですが、年齢が上がると、一定時間座れたり、指示やルールを理解して集団の中で活動したり、順番を待つことができるようになってくるでしょう。ところが、一定の年齢になっても
・言葉の遅れがある、語彙が増えない
・感情のコントロールが難しい
・落ち着いて過ごせない
・学習面での苦手さが目立つ
・人に手が出たり暴れたりしてしまう

といった行動が続く場合や、「一生懸命しているつもりなのに、授業中に勝手に身体が動いちゃうんだよ」というように本人が困り始めたときは、専門家に相談されるのも選択肢の1つかと思います。

診断名は、支援を受けるためのパスポート

診断名よりも重要なことは、子どもたち一人ひとりの特性を理解することや適切な環境の選択をすること、子どもにとって正しいかかわり方をすること、子どもたちの脳のスタイルに合わせた支援を行なうことです。また、得意な部分を伸ばし、苦手な部分の工夫や技を見つけるときには、専門家のサポートや、行政が行なっているさまざまな福祉サービスが役立つでしょう。
診断名は、これらの支援やサービスを受けるときのパスポートとして捉えてみてはいかがでしょうか?

いきなり医療機関に行くことに抵抗があったり、どのクリニックに行けばいいのかわからないといった場合には、乳幼児期なら自治体の保健師に、就学後なら学校の先生やスクールカウンセラーに相談されてください。地域の発達障がい者支援センターでも、医療機関の情報などを教えてくれます。福岡県では5カ所に発達障がい者支援センターが設けられているので、最寄りのセンターに相談してみるのも一つの手だと思いますね。

次回は、療育の現場にいる私たちが子どもたちと接するときに気を付けていることや、子どもたちに教えている「技」や「工夫」について、少し具体的にお話ししたいと思います。

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田中智子(たなかのりこ)さん

田中智子(たなかのりこ)さん

公認心理師。「遊びの教室リリー」代表。西南女学院大学保健福祉学部福祉学科今本ゼミで自閉症支援について学び、臨床を経験。ピラミッド教育コンサルタントオブジャパン(株)、福岡県発達障がい者支援センターの勤務を経て、「遊びの教室リリー」をスタート。未就学から成人期までの相談支援、個別・集団療育、講演活動、施設や学校のコンサルテーションなどにあたる。

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