うちの子って、もしかして発達障害? Vol.3

うちの子って、もしかして発達障害? Vol.3

福岡県嘉穂郡桂川町で「遊びの教室リリー」を主宰されている公認心理師の田中智子(のりこ)さんに、子どもの発達障害について聞いてきたこのシリーズ。最終回となる今回は、「発達障害のある子どもに対する、親としての心の持ち方」をテーマに話していただきました。本人にはどう言えばいいの? 学校や園に伝えるべき? などの疑問に答えてもらいます。

子ども本人にはどう伝えたらいい?

Q.告知は必要ですか?
A.発達障害の診断がついている場合、診断名を伝えるか伝えないかは保護者さんの判断になると思います。

告知が重要だと考える理由は、社会的な自立をするうえで、自分の特性を理解しておくことや苦手なことへの工夫や手立てを知っておくことが、とても大切になってくるからです。また、進学や就労先を選択するときや何らかの支援を受ける場合などにおいても、自分の特性を理解しておく必要があるでしょう。

Q.診断を受けたらすぐに告知をしないといけませんか?
A.診断後、すぐに告知をする必要はないかもしれません。なぜなら、子どもの成長や理解レベルに応じて、伝えるタイミングや伝え方も変わってくるからです。

私が告知をする場合は、「子どもの理解レベル」「子どもの気持ちの安定」「大きな環境の変化がない」「ご家族が子どもの特性を理解しており、家庭でも自閉症について当たり前のように落ち着いて話せる環境であること」など、さまざまな条件が重なったときに本人に告知をするようにしています。
 
あるいは、子ども自身がメディアなどから情報を得て、「自分って、もしかして自閉症?」と聞いてくることがあるかもしれません。そう聞かれた時にどう答えるか、お母さんやお父さんは、あらかじめ準備をしておくことをおすすめします。動揺してとっさに「いや、違うよ」と否定してしまうと、「自閉症は特別なこと?」「自閉症について聞いてはいけないのかな?」と伝わってしまう可能性があります。私の場合、教室に来ている子どもから「自分って、もしかして自閉症?」と聞かれたときは、否定をせず、自閉症について学んでいくことを提案し、一緒に特性について理解を深めていくようにしています。

また、自己認知支援は「告知をして終わり」ではなく、告知をする前の支援から告知後の支援も大切になってきます。お子さんへの告知をどうしようか検討されている方は、まずは専門家に相談をして、安全に進めることをおすすめします。

保育園や幼稚園、学校にも診断名を伝えるべき?

保育園や幼稚園、学校にお子さんの診断名を伝えるべきか迷われる方もいるでしょう。診断名を伝えるかどうか、それは保護者さんの判断だと思います。

園や学校に対してお子さんの特性を正しく理解してほしかったり、お子さんへの支援や困りごとに合わせた配慮を求めたりしたいときは、診断名を伝えることを選択肢の1つとして考えてみてはいかがでしょうか? また、担任の先生だけでなく、校長先生や教頭先生などの管理職や特別支援コーディネーターの先生に伝えることで、より理解を深めていただけることもあるでしょう。スクールカウンセラーや専門家に、子どもさんの特性の説明や支援のアイデアを提案していただくのも良いかもしれませんね。

園や学校の先生が特性や支援のポイントを理解してくれることは、子どもにとって心強いことであり、安心して学校生活を送れることにもつながります。

「自分しかいない」と抱え込まないで

保護者のみなさんは、日々、一生懸命に子育てをされていることと思います。子どもにできることは何でもしたい、と一生懸命な保護者の方。子どもの気になる行動がたくさんあって、何からどう取り組めばいいのか整理できず、混乱しているという保護者の方。お子さんの生活面から学習面のサポートまで一人で全部抱え込んで、誰かの支援や応援が必要な保護者の方。ご家族の理解が得られなくて、一人で頑張っている保護者の方…。

みなさん、もし特性のあるお子さんの子育てで困ったことや迷うことがあったら、一人で抱え込んだり悩んだりせずに、誰かに相談してくださいね。私は、お母さんやお父さんがリフレッシュすることや、子育てについて気軽に相談できる場所があることも、特性のあるお子さんを育てていくうえで大切なことと思います。

発達障害のお子さんがいるご家庭の方へ

最後に、私から発達障害の特性のあるお子さんがいらっしゃるお母さんやお父さんに、メッセージがあります。
特性のあるお子さんが、自分らしく、ありのままの個性を大切にしてポジティブに生きていけること。そして、お子さんとそのご家族が、日々の生活の中で「楽しい!」「幸せ!」と感じられるような人生を送ってほしい。それが、私の一番の願いです。

一緒に子どもの特性を知り、子育てのコツを探していきましょう! 一人で悩み抱え込まずに、お子さんの理解者やサポーターを増やしていく第一歩として、まずは誰かに相談してみてはいかがでしょうか? お子さんとの向き合い方や子育てに対する考え方が、きっと広がっていきますよ。

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田中智子(たなかのりこ)さん

田中智子(たなかのりこ)さん

公認心理師。「遊びの教室リリー」代表。西南女学院大学保健福祉学部福祉学科今本ゼミで自閉症支援について学び、臨床を経験。ピラミッド教育コンサルタントオブジャパン(株)、福岡県発達障がい者支援センターの勤務を経て、「遊びの教室リリー」をスタート。未就学から成人期までの相談支援、個別・集団療育、講演活動、施設や学校のコンサルテーションなどにあたる。

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