ふれあうことで感じあえる幸せ『はい たっち』
書店「からすのほんや」店主・からすちゃんが選ぶ、子どもと、本と⑱
ここ最近は、赤ちゃんを抱っこさせてもらったり、子どもたちの大好きなタッチをしたりということも、遠慮せざるを得ない日々ですね。仕方ないとは思いながらも、ちょっと寂しい毎日です。
最近生まれた赤ちゃんたちは、生まれた時からマスクをした顔を見て、家族以外に触れる機会も少ないですよね。そして、それが普通になっていることも多いのかもしれません。
私がなぜふれあえないことを「寂しい」と感じるのか。それは、これまでにふれあうことを経験して、その幸せを知っているからなのかもしれません。そう考えたら、赤ちゃんにもこの幸せを届けたくなっちゃいました。
こんな絵本はいかがでしょう?
最初は肉球のある誰かの手が出てきます。その手にタッチすると、次のページには、ねこちゃんが嬉しそうにウインクしている姿が描いてあります。次はもう少し大きな手。タッチすると犬が喜んでいます。今度はとても小さな手。だれかな? 巨大な手も出てきますよ。
タッチをすると、みんな嬉しそうな顔になります。
最後のページは、自分の手形を残すことができるようになっています。赤ちゃんの手。きっとかわいいお手々でしょうね。
随分前のことですが、心がとても傷ついて、もう消えてしまいたいと思った女の子がいました。一緒に病院に行ったときに、病院の先生は「誰かにそっと触れて、あたたかさを感じることが、心を元気にしてくれるんだよ」と教えてくださいました。
ふれあうこと。
ふれあうことで感じるのは、相手の生命であると同時に、自らの生命。優しくふれあうその瞬間に弾ける音と笑顔は、喜びでしかないということを、感じあえる作品に出会ってほしいなと願っています。
今回ご紹介した本
『はい たっち』
作:からさわようすけ
エンブックス
profile
芳野仁子(よしののりこ)さん
子どもの本とおもちゃの専門店「からすのほんや」店主。雑誌や新聞で絵本や子育てに関するコラムを執筆するほか、子育てに関する講座の講師も務める。
小学生対象のフリースクール「みんなのおうち」、考える力を楽しく養うキッズスクール「ひみつの国語塾」を運営。「一般社団法人 家庭教育研究機構」代表理事。
からすのほんやホームページ
http://karasubook.com/