感じるままに、遊んでみよう！『ふーってして』

もう10年以上前に、小学校で学校の旗を作る絵画のワークショップを催したことがあります。参加した子どもたちは全員水着で「汚しちゃっても大丈夫！ 洗えばいい！」というスタイルでした。真っ青な空の下で、シーツをつなぎ合わせた巨大な白い布を広げて、好きな色を使って、全身で、思いっきり描きました。それはそれは、勢いのある、すてきな旗ができあがりました。

その子たちがずいぶんと大きくなって再会した時に「どんなの描いたかあんまり覚えてないけれど、とにかく楽しかった！ってことだけは忘れられないんですよね～。」と話してくれました。思いきり自分を表現できることって、本当に楽しいものです。

芸術の秋。すてきな絵画に出会うのも楽しみのひとつですが、自ら表現してみることも、きっと楽しいことでしょう。「洋服や部屋が汚れちゃうから」とか「画材があまりないから」って心配しなくても、とっても楽しめちゃう世界が、この絵本にはあります。

色水をぽとりと落として、ふーっと息を吹きかける。黄色は太陽に。緑は草に。動物のしっぽやひげになったり。最後のページは、黒い紙に白の色水。ふーって息を吹きかけたら、さぁ、何が生まれると思いますか？

この絵本に出会ったら、読むだけでなく、きっと描きたくなると思います。ひとりで描くのもいいし、家族やお友達と描いてみるのも良いかもしれません。ポイントは想像力。色からだけでなく、息を吹きかけた後の形から思い浮かべても良いですよね。表現に決まりはないし、限りもない。そして、正解も、間違いもない。子どもたちが描いた世界は、私たちの想像を超えてきて、いつも刺激的ですよ。

『ふーってして』
作：松田 奈那子
KADOKAWA