つめたい？ やわらかい？『おばけのてんぷら』

子どもの頃、祖母が甘鯛のフライやお芋の天ぷらを、夕飯のお膳に運んできてくれるのが待ちきれず、台所でこっそりつまみ食いをして、よく叱られたことを覚えています。子どもたちが、揚げたての天ぷらを好きなのは、今も昔も変わらないのかな？
わが家に遊びに来る子どもたちに、揚げたてのお芋の天ぷらを振る舞ったら、「おうちで作ったらおいしいんやね～」と言われました。聞けばおうちで揚げ物をしない家庭が結構あることを知って、驚きました。便利な世の中になってきたからでしょうね。

この作品の主人公は、うさこちゃん。お友達のこねこくんのお弁当に入っていた、おいもの天ぷらがおいしくて、こねこくんのお母さんから借りた料理本を見ながら、天ぷらづくりにチャレンジします。途中、玉ねぎを切っていると目に染みて、涙を拭こうと外したメガネが、衣（ころも）の中にぽちゃん！と落ちたことに気づいていません。
そうこうしているうちに、おいしそうな匂いに誘われてやってきたのは、山のおばけ。おばけは、うさこちゃんに見つからないように飛び回り、つまみ食いをしています。ところがこのおばけ、油で滑って衣の中に落ちてしまいます。さぁ！大変！！この続きは、ぜひ読んでみてくださいね。

食事の前に台所から届く匂い。幼かった私も、このおばけちゃんと同様に、台所に誘われていました。食事前のおいしそうな匂いも含めて、「夕食」だったのかもしれないなぁ。あぁ！おなかがすいてきました。今日のごはんは、何かな～？

『おばけのてんぷら』
作・絵：せな けいこ
ポプラ社