雪がちらつくころになると読みたくなる『ぴぴんぴよどり』

雪がちらつくころになると読みたくなる『ぴぴんぴよどり』

書店「からすのほんや」店主・からすちゃんが選ぶ、子どもと、本と⑰


雪がちらつくころになると、いつもこの昔ばなしを読みたくなります。

山奥に住むおじいさんが、ある雪の朝に顔を洗いに川へ行くと、寒さに震える一羽のヒヨドリが、切り株にとまっていました。かわいそうに思ったおじいさんは、ヒヨドリをそっとつかまえて、息をかけて温めてあげました。だんだんと元気になったヒヨドリは、息をかけようとしたおじいさんの口の中に飛び込んで、お腹の中に入ってしまいます。しばらくすると、おじいさんのおへそから、ヒヨドリのしっぽが出てきます。
おじいさんがそのしっぽを引っ張ると、お腹の中の鳥が良い声で鳴きます。それが噂になり、おじいさんはお殿様にお城へ呼び出されます。おじいさんはどうなってしまうのでしょう。

この作品のヒヨドリの鳴き声。呪文のようにリズムよく、子どもたちはすぐに覚えてしまうんです。絵本を読んでいたら、一緒に口ずさんでくれて、クスクスと笑ってくれたりもします。どんな鳴き声か気になる方は、ぜひ、手に取って読んでみてくださいね。

子どもの頃、寒い日に学校から帰ると、祖母がストーブの傍で、私の手に息を吹きかけながら、そのふくふくとした手で、ちいさな私の手を何度もさすって温めてくれた思い出があります。その時、祖母は何か歌っていたような気がするけれど、はっきりとは思い出せないでいました。

ずいぶん大人になって、わらべうたをたくさん知っている近所のご婦人が、その歌を歌っていらっしゃるのを聞いて懐かしくなり、厚かましくも子どもみたいに私の手をさすってもらうと、幼い頃のことが蘇って、何とも幸せな気持ちになりました。

このヒヨドリは、体だけでなく心も温まったお礼に、美しく鳴いていたのかな。特別なことではなくても、日々の中のささやかなことが、子どもたちの極上の幸せで、心を温めてくれる思い出になるものなのかもしれませんね。

今回ご紹介した本

『ぴぴんぴよどり』
再話:おざわとしお・こんどうようこ
絵:ながのひでこ
くもん出版

profile

芳野仁子(よしののりこ)さん

芳野仁子(よしののりこ)さん

子どもの本とおもちゃの専門店「からすのほんや」店主。雑誌や新聞で絵本や子育てに関するコラムを執筆するほか、子育てに関する講座の講師も務める。
小学生対象のフリースクール「みんなのおうち」、考える力を楽しく養うキッズスクール「ひみつの国語塾」を運営。「一般社団法人 家庭教育研究機構」代表理事。
からすのほんやホームページ
http://karasubook.com/

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