何度読んでも発見がある『うさぎマンション』

何度読んでも発見がある『うさぎマンション』

書店「からすのほんや」店主・からすちゃんが選ぶ、子どもと、本と(54)


春になって、お引っ越しをなさるというご家庭も多いのではないかと思います。今回の絵本は、うさぎさんが引っ越してきたマンションのおはなしです。
ある日、うさぎマンションに新しい家族が引っ越してきます。マンションは屋上付きの5階建て。お部屋は24室あって、そこに暮らすみんなの様子がそれぞれに描かれています。
最初のページはレンガ造りの外観。個性あふれる窓が並んでいます。どのお部屋に、どんなうさぎさんが住んでいるんだろう、と想像力をかきたてられます。外観が描かれたページは観音開きになって、開くと迫力があります。そこには、それぞれの部屋の朝の様子が細かく描かれています。大工、作曲家、画家、仕立て屋などなど、いろいろな人が暮らすうさぎマンション。ページをめくるごとに、「あれ?あのうさぎどこに行っちゃった?」と探してみたくなったり、「このうさぎさん、何してるんだろう?」と前のページに戻ってみたり。細かいところが気になって、いつの間にか、絵本の中を行ったり来たりしてしまいます。4・5歳の子はきっと楽しんでくれると思いますよ。ピンポーンと音がして、やってきたのはお隣さん。さて、これから何が起こるのでしょう?
24の部屋のうさぎたちが織り成す、それぞれの暮らし。毎日いろいろあるけれど、今日、この時を生きているという物語。それが重なり合ったうさぎマンション。最後の夜のページを見ていると、何だか、ホッとするような安心感に包まれます。こんなマンションがあったら、私も住んでみたいな。

今回ご紹介した本

『うさぎマンション』
作:のはな はるか
くもん出版

profile

芳野仁子(よしののりこ)さん

芳野仁子(よしののりこ)さん

子どもの本とおもちゃの専門店「からすのほんや」店主。雑誌や新聞で絵本や子育てに関するコラムを執筆するほか、子育てに関する講座の講師も務める。
小学生対象のフリースクール「みんなのおうち」、考える力を楽しく養うキッズスクール「ひみつの国語塾」を運営。「一般社団法人 家庭教育研究機構」代表理事。
からすのほんやホームページ
http://karasubook.com/

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