福岡市の隅っこで姉妹を育ててます!! Vol.50

福岡市の隅っこで姉妹を育ててます!! Vol.50

初「筑前町立大刀洗平和記念館」での衝撃

先日、初めて「筑前町立大刀洗平和記念館」を訪れる機会がありました。

「筑前町立大刀洗平和記念館」、ご存じですか? かつて旧陸軍の巨大飛行場が存在し、多くの若い特攻隊員を見送った土地に立つ、“平和への情報発信基地”です。

…と説明すると、「堅い場所?」と感じるかもしれませんが、お勉強お勉強した雰囲気はまったくなく、戦闘機や当時の人たちの服・持ちものなど、実物の展示もいっぱい。大人はもちろん、子どもも興味が持てる工夫がなされている施設です。

映画『ゴジラ-1.0』の撮影に使われた“幻の戦闘機”「震電(しんでん)」の実物大模型もあるんですよ!

平日の午前中に訪れたのですが、館内には先客が数組。さらに、社会科見学で来館している小・中学生たちの姿も!「近ごろ、映画や小説の影響で、“特攻”をより深く知ろうとする人が増えている」と聞いてはいましたが、予想以上の人数に、世間の関心の高さを実感しました。


館内には、特攻隊員たちが家族に宛てた手紙、大空襲による被害を伝える写真など、戦争の悲惨さをリアルに伝える展示も多数。

特攻隊員として出撃した隊員の多くがまだ10代の少年だったことを知ると、自然と、長女の同級生たちの顔が思い浮かびました。「あの子たちが軍服を着て出撃するなんて想像できない。でも、ほんの80年くらい前に、現実にあったことなんだ…」などと考えるにつけ、胸に迫るものがありました。


しかし、戦争・平和にまつわる施設を訪れるのですから、悲しみや恐怖を覚えるであろうことは覚悟の上。なんとか涙はこらえられました。

…と思っていたのに、ある展示に、「怒り」という、予想もしなかった角度から感情を揺さぶられたことをきっかけに、涙がこぼれてしまいました。


それは、特攻隊員に配られた「と号空中勤務必携」という冊子の抜粋。

「と号空中勤務必携」は、特攻のマニュアル的なものなのですが、技術的な解説に加えて、衝突時の心構えも記されていました。それが、令和を生きる日本人の目には信じがたい代物だったんです。
一部を引用するとーー

〈衝突直前〉
◎速度ハ最大限ダ
 飛行機ハ浮ク ダガ
 浮カレテハ駄目ダ
◎力一パイ、押ヘロ押ヘロ
 人生二十五年、最後ノ力ダ
 神力ヲ出セ
 
衝突ノ瞬間
◎目ナド「ツム」ツテ
 目標ニ逃ゲラレテハナラヌ
◎眼ハ開ケタママダ
 眼ヲ開ケタママ「ブツ」カツタ男モアル 
 彼レハ其ノ楽シサヲ語ル

〈突撃時ノ注意〉
〇「必殺」ノ
 喚声ヲ挙ゲテ撲リ込メ
 (斯クシテ靖国ノ桜ノ花ハ微笑ム)

ーー読み進むにつれて、
「なんだと!人生25年って、まだまだこれからなのに。しかも、まだ10代の少年たちに、偉そうに、こんなこと刷り込んで…桜も微笑んでないよ!!」と、怒りでいっぱいになりました。

こんな愚かなマニュアルに従って、死地に赴かなくてはならなかった若者自身はもちろん、残された家族や友人の気持ちもいかばかりだったかと想像するだけで、胸が張り裂けそうになりました。


戦争や特攻についてはなんとなく知っているつもりでいましたが、当時の生々しい史料から受けた衝撃は、予想以上に大きなものでした。戦後80年近い今、自身の戦争体験を伝えられる方は少なくなってきていますが、残された遺品や記録を受け継いでいくことの意味の大きさを実感。

戦争を、教科書の中だけの話ではなく、地域で起こった自分とつながりのある出来事として捉えるきっかけをくれる貴重な施設でした!まだ訪れたことがない方も、ぜひ、足を運んでみてくださいね。

profile

福岡市の隅っこで暮らす「おかあちん/私」と「おとうちん」、素直でまっすぐな長女「ぴーちゃん」、独特の世界観で世の中を突き進む次女「テイ子」、4人家族のささやかな日常。おかあちんは広報誌などのライターとして活動する傍ら、時々コミックエッセイも制作。温泉ソムリエ認定あり。

Xでイラスト日記配信中
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