vol.9 火曜日の女
絵本の紹介でお馴染み「からすのほんや」店主 からすちゃんと嘉麻市在住のイラストレーター maruikoちゃんの「むかし子どもだったあなたへ」
フリースクール「みんなのおうち」の子どもたちが教えてくれる、子どもとのくらしのヒントを、スクール代表のからすちゃんと一児のママmaruikoちゃんがお届けします。
今回のテーマは「火曜日の女」。これは、ある中学生の女の子が、自分自身のことを指し示して言った言葉。
実はこの子、いつも火曜日にフリースクールを休んでいました。通常なら、お休み明けの月曜日が憂鬱な子が多いのですが、この子は月曜日にはとてもはつらつとしていて、元気もよさそうな感じ。ところが、翌日にはなぜかお休みします。そして、その日をきっかけに週末まで不調が続くことが多くありました。
そういう自分に気づいたのは、スクールで使っている出席カードがカレンダー形式だったからかもしれません。カレンダーを見てみると、ある特定の曜日にお休みしている子が意外に多いものです。
さて、この子だけでなく「火曜日の女」(男の子もいますけど)には、ある特徴が見られます。とても真面目で、がんばり屋さん。優しくて、おうちの方はお子さんの教育にとても熱心。また、定期試験前になると、高い目標に向かってがんばって勉強し、ずいぶん遅くまで起きていたりする子も少なくありません。そして、試験後は抜け殻のようになっていたりもします。
要するに、一生懸命すぎて力の配分がうまくできていなかったり、目標設定が自分にぴったりのものではなかったりするのです。自分を苦しめるほど、真面目でがんばり屋さんで、優しい子たちなのです。
こういうときは、子どもたちに階段の絵を見せて説明します。「目標を持つことは、とっても良いこと。けれど、5段先まで一歩で行こうとすると、どうしても無理をしてしまう。失敗して落ち込んでしまう可能性も高くなる。だけど、自分に合ったちょうど良い目標を見つけることができるようになれば、がんばることは苦しみではなく、心地よさになる。この方法は、遠回りみたいだけど近道なんだよ」と。
これを実行するには、「できるはずの自分」ではなく「本当の自分」を見つめなくてはなりません。しかし、これがなかなか受け入れがたいことでもあるのです。このハードルをひとりで越えるのではなく、少しだけ先に生まれて、同じ経験をしてきた大人の私たちが寄り添ってアドバイスしてあげることも、きっと子どもたちの力になると思います。
「火曜日の女」。中学校卒業の時には、「自分のありのままを受け入れてくれて、ありがとう」という言葉を残していってくれました。今は進学先で素敵な女性に成長中。いつか不登校の子どもたちに関わる仕事がしたいと思っているそうです。
来た来た!シート
今回、maruikoさんがかわいい出席シート「来た来た!シート」を作ってくれました。そのまま使える「カラー版」とぬり絵が楽しめる「モノクロ版」の2つを用意しましたので、皆さんも良かったら使ってみてくださいね。
profile
芳野仁子(よしののりこ)さん
嘉麻市生まれ。子どもの本とおもちゃの専門店「からすのほんや」店主。雑誌や新聞で絵本や子育てに関するコラムを執筆するほか、子育てに関する講座の講師も務める。
小学生対象のフリースクール「みんなのおうち」、考える力を楽しく養うキッズスクール「ひみつの国語塾」を運営。「一般社団法人 家庭教育研究機構」代表理事。
からすのほんやホームページ
http://karasubook.com/
maruikoさん
イラストレーター。福岡県嘉麻市出身・在住。展覧会などで作品を発表する他、さまざまな媒体のイラストやデザインを手がける。山に囲まれた小さな住宅街の小さな家で日々暮らしている。まるやまももこ名義で音楽活動も行っている。2015年に息子が生まれ現在子育て中。
ホームページ:
https://marumomo48.wixsite.com/maruiko