vol.16 つながる つながる
絵本の紹介でお馴染み「からすのほんや」店主 からすちゃんと嘉麻市在住のイラストレーター maruikoちゃんの「むかし子どもだったあなたへ」
フリースクール「みんなのおうち」の子どもたちが教えてくれる、子どもとのくらしのヒントを、スクール代表のからすちゃんと一児のママmaruikoちゃんがお届けします。
フリースクールのAくんが、遠くへ引っ越すことになりました。子どもたちに話すと、夕飯がのどを通らないほど寂しがる子もいました。
これまで、学校復帰に伴って、フリースクールを離れる子もいましたから、別れには少しは慣れていると思っていたのですが、今回はどうも様子が違います。
子どもたちに話を聞くと、どの子も共通の思い出話になりました。どんな内容かというと、「初めてフリースクールに来た時に、最初に話しかけてくれたのがAくんだったから」とのこと。
Aくんにその話をすると、「だって、僕が初めてフリースクールに来た時、Bくんが話しかけてくれたから。自分もそうしようと思って、やってきた」と。Bくんは、既に学校に通っていて、今はフリースクールにはいないのですが、Aくんが初めてフリースクールに来て緊張していた時に、さりげなく席を勧めてくれたり、話しかけてくれたりしたらしいのです。AくんがBくんにしてもらった優しい行動を、新しくやってきた仲間みんなに同じようにやってきたことを、引っ越しの数日前に知りました。
引っ越しの日。AくんとBくんのふたりは、久しぶりに再会しました。名前を呼び合い、駆け寄る二人の姿の向こうに、大きな虹が見えました。
不登校という、抱えきれないほど苦しく重い現実と向き合っている子どもたち。学校という場所を離れていても、こうしてすばらしい成長を遂げていること。おうちでひとり過ごす日々があったとしても、誰かを想う優しさを持ち、行動する勇気を持っていること。そして、やさしさ溢れる社会の一員でありたいという願い。こうして命いっぱい生きている子どもたちの物語を目の当たりにして、やっぱりこの世は、生きるに値する世界なんだ、とあらためて教えられました。私たちが、生きて今ここにいられる幸せを強く感じた一年の締めくくりでした。
やさしい気持ちを持っている人は、きっとたくさんいると思います。そのやさしさが、ほんの少しの勇気を出して行動することで、輪になってつながって、どんどん広がっていくのだとしたら、世界は包まれるような温かさに満ち溢れることでしょう。来年は、そんな一年になるといいなって思っています。
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profile
芳野仁子(よしののりこ)さん
嘉麻市生まれ。子どもの本とおもちゃの専門店「からすのほんや」店主。雑誌や新聞で絵本や子育てに関するコラムを執筆するほか、子育てに関する講座の講師も務める。
小学生対象のフリースクール「みんなのおうち」、考える力を楽しく養うキッズスクール「ひみつの国語塾」を運営。「一般社団法人 家庭教育研究機構」代表理事。
からすのほんやホームページ
http://karasubook.com/
maruikoさん
イラストレーター。福岡県嘉麻市出身・在住。展覧会などで作品を発表する他、さまざまな媒体のイラストやデザインを手がける。山に囲まれた小さな住宅街の小さな家で日々暮らしている。まるやまももこ名義で音楽活動も行っている。2015年に息子が生まれ現在子育て中。
ホームページ:
https://marumomo48.wixsite.com/maruiko