産後うつを乗り越えて 第1話

産後うつを乗り越えて 第1話

体調がすぐれず食欲がない。気分的に落ち込んでやる気が出ない…。子どもを出産した後に身体的、精神的なさまざまな症状に悩まされる産後うつ。本来であれば、母親として子どもとかけがえのない時間を過ごしている日々に、辛い症状に苛まれている方も少なくないといいます。

美収納コンシェルジュとして現在、福岡を中心に活躍している園藤(えんどう)ふみさんも、3年間にわたって産後うつに悩まされた経験をお持ちのお一人。そんな園藤さんが産後うつをどのように乗り越えてきたか、2回にわたってお話をお聞きします。

だるさと気分の落ち込みで、育児も家事もできない


園藤さんが産後うつにかかったのは今から20年前、長男を出産した直後だったそうです。

園藤さん:
「私、お産が大変で。出産直後から子宮の収縮が悪くて出血が止まらず、輸血をしないといけなくなったんです。1週間後に退院はしたのですが、その頃からとにかくだるく、全身に発疹が出て、気分もかなり落ち込んだ状態が続くようになりました。そのせいで育児も家事もほぼ手がつけられなかったですね。

部屋の中では常に横になっていて、最低限の用事以外、起き上がることすらできませんでした。子どもが1歳を過ぎて家の中を動き回るようになってからも、部屋の中を散らかすのをただ眺めているような状態で…。子どもを外に連れて行ってあげることもできなかったので、息子も小さいなりにかなりストレスをためていたと思います」

協力的だった夫と子どもに申し訳なく感じる日々


そのような園藤さんに対して、夫はどんなふうに接していたのでしょうか。

園藤さん:
「幸い、夫は私のお産の際の大変さを目の当たりにしていたこともあって、私を責めることはなかったですし、台所に立てない私を理解して、毎日の食事もお惣菜などを買ってきてくれていました。

でも、だからこそ夫にも子どもにも申し訳ない気持ちでいっぱいで…。子どもが産まれて、本当なら今が一番幸せな時期なのに、夫とその喜びを分かち合うこともできない。子どもに母乳をあげることもしんどいし、かわいい盛りの子どもの写真1枚写してあげることもできない。『私は一体どうなってしまうのだろう』と苦しみや不安しかありませんでした。

当時はまだ『産後うつ』という言葉は一般的ではなかったので、自分がどうしてこんなふうになっているのか、原因がわからないことが最も辛かったですね。

先行きが全く見えなくて、夫には何度も『離婚してほしい』と訴えましたし、自ら死ぬことも考えていました」。

心療内科を受診するも、病名はわからず…


そんな状態が続く中、インターネットで自殺に関するサイトを園藤さんが調べていたことを夫が知ってしまい、園藤さんは夫のすすめで心療内科を受診することになりました。

園藤さん:
「もちろん、私自身は病院へ行くことにも抵抗はありました。でも、診察を受ければ自分の病名がわかる。そしたらちゃんと治療もできる。そんな一縷(いちる)の望みを持って、自分を奮い立たせるようにして夫と一緒に病院に行ったんです。でも結局、診断はつきませんでした。医師からは、はっきりとした原因はわからないと言われ、数種類の漢方薬を処方されたのを覚えています」

ふとしたことから快方に向かい始めて

今は、整理収納をお仕事にしていることもあり、美しく整えられた園藤さん宅。
とても散らかっていた日々があったとは思えません。

それ以降もうつ状態が続いていた園藤さんでしたが、3年近く経ったある日、ふとしたことで回復への兆しが見えはじめます。

園藤さん:
「受診後も病状は一向に回復しなくて、とにかくあの頃は先の見えない暗くて長いトンネルの中にいるような時間を過ごしていました。

経験したことのない人には考えられないかも知れませんが、食後に汚れた器を台所に持って行くことすらできないんです。当然、家の中は足の踏み場もないくらい散らかり放題。

でも、そういう日々の中で、何がきっかけになったのか未だに自分でもわからないのですが、本当に少しずつ少しずつ、体調が上向き始めたんです。3年間ほとんど家を出ることがなかったのに、短時間ですが外に出かけられるようになって、買い物や、子どもを連れて公園にも行けるようになりました。体調が回復するのとともに、気持ちも少しずつ上を向いていったという感じだったように思います」

このように、病状に明るい兆しが見えはじめた園藤さん。その後の完治に至るまでと、ご本人が経験したからこそ考えられる産後うつについて、お話は第2話に続きます。

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園藤ふみ(えんどうふみ)さん

園藤ふみ(えんどうふみ)さん

美収納コンシェルジュ、片付けメンタルコーチ。3年間にわたる産後うつの経験を経て、整理収納アドバイザーの資格を取得。現在は福岡を中心に個人宅で整理や収納、行政や企業での講演会やセミナーを手がける他、テレビやラジオ、雑誌などのさまざまなメディアで活躍。著書に「男前収納でキレイになる片づけのコツ」(きずな出版)がある。
https://www.bisyuno.jp