教えて井手先生!産後のギモン・お悩みQ&A⑩ ~断乳・卒乳、いつ、どうすればいいの?
長年、地域の助産師として産後ママの体と心のケアにあたってきた「ベビーフェリス井手」の井手敬子(いできょうこ)さんが、ママたちから寄せられた疑問や悩みにお答えします。うまくいかないことの連続でヘトヘトになった産後ママたちの心と体が、少しでも軽くなりますように。
いつまで母乳を飲ませて良いのでしょうか。また、断乳するとしたら、どんな方法がいいのでしょう。
断乳のタイミング
かつては、母子手帳に“1歳3カ月になったら断乳しましょう”と記載されていた時代もありました。ですが、現在では、そうした一律の指導は行われなくなってきています。それだけに、いつ断乳したらいいのか、もしくは、断乳はせずに赤ちゃんが自然とおっぱいとバイバイする「卒乳」を待つべきなのかと、戸惑っておられるお母さんも多いと思います。
お母さんが授乳を負担に感じておらず、赤ちゃん側もよくおっぱいを飲んでいるようなら、いつまでと区切りを設けずに卒乳を待ってみるのもいいと思います。ただ、欲しいときにすぐ母乳が飲めるような状況だと、離乳食があまり進まない赤ちゃんもいます。その場合は、無理をしない範囲で授乳を少しずつ減らして、離乳食を増やしてみるといいでしょう。そうすると、少しずつ卒乳に向かいます。
もし、お母さんご自身がいろいろな理由で「もうそろそろ、おっぱいをやめたいな」と思う時がきたら、その時点でやめてしまっても大丈夫です。ただし、母乳だけで育てていて、赤ちゃんが頑としてミルクを飲まない場合は、少なくとも離乳食でしっかり栄養が取れるようになる1歳ごろまでは待ってあげてくださいね。
断乳のタイミングを迷っている方に対しては、私は、1歳半以降をオススメしています。というのも、個人差はありますが、1歳半になれば、少し意思の疎通ができるようになるからです。「ご飯食べる?」「お茶飲む?」「お外行く?」という問いかけに、子どもが「うん」とうなずけたら、無駄に泣かせずに済み、助かりますよね。
断乳の進め方
断乳の方法としては、断乳当日に突然サヨナラにするよりも、あらかじめスケジュールを立てて、事前に言い聞かせておくとベターです。お母さんにも赤ちゃんにも覚悟があったほうがいいので、その子の理解度に合わせ、断乳予定日の1週間〜5日くらい前に伝えるようにしましょう。
その際には「もうおっぱいは飲んだらダメ」「まだ飲んでいたらおかしいよ」といった否定的な表現は避け、「おっぱいにバイバイしたらステップアップできる」という肯定的なイメージづけをしていけば、お互い過度に不安にならずに済みます。
まず、カレンダーの日付に花丸をつけて、「この日までは、毎日おっぱいを飲んでもいいんだよ」と伝えてください。笑顔で「この日おっぱいにバイバイしたら、大好物の○○を作るからね」、「パパとドライブに行こうね」といった、ワクワクするひと言を添えるといいでしょう。
言いすぎは不安を生むので、断乳について話すのは、1日1回だけ。毎日、機嫌がいい時を見計らってお話ししてくださいね。この時期、祖父母などほかの家族まで断乳について「○○ちゃん、やっとおっぱいやめるんだね」などと言いすぎてしまうと、身構えて執着が強くなってしまうこともあるので、声かけは親からだけにするよう周囲にも協力を仰ぎましょう。
もちろん、こうして準備を重ねても、いざ断乳当日になると子どもは泣きます。ただ、理解できずに怒って泣きわめくわけではなく、「お母さんが言っていたのは、こういうことだったんだ」という実感を噛みしめる涙になるはずです。
断乳の日を迎えたら、いくつか注意してほしいことがあります。まず、「おっぱいに怖い絵を描く」といった断乳方法を取り入れないこと。大好きだったおっぱいが怖いものに変わってしまうと子どもは少なからずショックを受けてしまうかもしれません。もし絵を描くのであれば子どもの好きな絵を選んで、気を紛らわせるようにしてあげてください。
また、お母さんは断乳中、泣いている子どもを見るとつい「ごめんね」と言ってしまいたくなると思いますが、謝るのはナシにしましょう。お母さんが悪いことをしている訳ではないのですから。
それよりも、「おっぱいバイバイしてすごいね、頑張ってるね」と、たくさん褒めましょう。「お母さんもおっぱいあげたいけど、がまんできているよ。ちゃんと約束を守れていて、二人とも偉いよね」と、自分のことも含めて、断乳をポジティブに捉える声かけをすることがとても大事です。
それでも子どもは2、3日間、泣き続けることと思います。「おっぱいはバイバイと分かっているけれども涙が出てしまう」と、お母さんに背中を向けて、自分自身と戦っているうちに寝てしまったというような体験談を、本当によく聞きます。でも、きちんとさよならのプロセスを踏んでおっぱいにバイバイできたら、日を追って泣くことも減っていきます。その時には、子どもの精神的な成長を実感できるはずです。楽しみにしていてくださいね。
ところで、断乳後は、お母さんのおっぱいのケアも忘れずに。いつ搾るか、また搾る頻度といった断乳後の母乳を止めるお手当の仕方は、やめるタイミングやおっぱいの状況によって異なります。インターネット上で見つけたほかの人のやり方を当てはめると乳腺炎などのトラブルに繋がる恐れもありますので、できる限り、断乳を始める前に、出産した病院や地域の助産師、保健センターの育児相談などに相談をしてみてくださいね。
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井手敬子(いできょうこ)さん
助産師、母乳育児相談室「ベビーフェリス井手」代表、国際中医薬膳管理師。母乳と育児に関するよろず相談を受け付ける。母乳マッサージや授乳レッスンも実施。
<ベビーフェリス井手 母乳育児相談室>
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