正しく知って、しっかり理解。不登校のこと 第1話

正しく知って、しっかり理解。不登校のこと 第1話

5月は大人と同様、子どもたちにとっても何かとストレスがたまりやすい時期。新学期を迎えた後の新しい環境になじめない。友人関係がうまくいかない。勉強についていけない…。さまざまな理由で、学校に足が向かなくなる子どもが多くなるのだそうです。
不登校は、小・中学生の間で年々増え続け、今や誰がいつそうなるか、その可能性は否定できません。そこで、一般社団法人「不登校支援センター」福岡支部カウンセラーの永島裕(ながしまゆう)さんに、不登校について知っておきたいことや、不登校の子どもとの接し方などについて、2話にわたってお聞きします。

4年連続で増えている、不登校の子どもたち


ここ数年の、不登校の子どもの現状はどうなっているのでしょうか。

永島さん:
「文部科学省によると、昨年、不登校の子どもは全国で小学生が約3万人、中学生が約10万人。割合でいえば小学生では全体の約1%、中学生は約4%が不登校ということになります。どちらも5年連続で増えているそうですが、平成29年度は平成28年度より6%増だというから驚きますね。当センターへの相談件数も増え続け、現在は全国で年間5000件ぐらいに上ります。

不登校が増加している理由はいろいろありますが、その中でも私たち親世代が“わかりにくい”と感じる理由の一つとして挙げられるのは、インターネット環境ではないでしょうか。カウンセリングをしていて、メールやLINEなどのやりとりがうまくいかずに友人関係に悩んだり、世界中の情報が簡単に手に入ることで、自分と他人を比較して落ち込んだりということが、子どもたちの中でも少なくないんです」

さまざまなきっかけで不登校に


そもそも、不登校とはどのような状態をいうのでしょうか。不登校の引き金になる要因とは?

永島さん:
「不登校の子どもの定義として、文部科学省は『病気や経済的な理由を除いて、心理的・情緒的・身体的または社会的な要因や背景によって登校しない(できない)状況になり、年間30日以上欠席した場合』としています。
友人とのトラブル、先生への不満、勉強についていけないなど、不登校になるきっかけはさまざまですが、要因がはっきりしていなかったり、いくつかの要因が複雑に絡み合っていたりするケースも少なくありません」

引き金となる要因が曖昧なことも多い


要因がケースバイケースで、はっきりしないことも多いだけに、その解決法や対処法も手探りにならざるを得ないというわけですね。

永島さん:
「そうですね。不登校の子どもになぜ学校に行きたくないのかを尋ねても、理由を明確に言えない子どもが結構多いんです。その理由には、大きく2つのパターンあります。

一つは、最初は『友だちとのトラブル』と言っていたのに、次に聞くと『勉強がわからない』と答えるなど、毎回話の内容が異なる子。でも、これは決してその場しのぎで言っているわけではなく、その子にとってはどちらも本当の理由であり、その場の答えがその時の率直な気持ちなんです。

もう一つは『わからない』と答える子。これもまぎれもない本心で、日々の自分の学校生活の何が負担になっているのか、どこが辛いのか、自分でも自覚できていない子どもが多くいることも確かです」

いじめだけが要因になる不登校は少ない

不登校といえば、いじめが要因になっているのではないかと心配する親も多いと思いますが…。

永島さん:
「よく、『不登校の原因は、いじめによるものでは?』とおっしゃる方がいます。でも意外かもしれませんが、カウンセリングをしていて、完全にいじめが直接の要因とされる不登校はほとんどありません。
でも、いじめられて不登校になっていた子どもが、転校によっていじめが収まったにもかかわらず、再び不登校になってしまうケースはしばしばあります。つまり、子どもの心はそれほど複雑なんです」

不登校は、学校に行けない「状態」


専門家の方にとって、不登校は「病気」あるいは「しょうがい」という認識ですか?

永島さん:
「不登校は病気でもしょうがいでもなく、学校に行けない『状態』を示していると私たちは考えています。『発達障害があるから不登校になってしまったのでしょうか』と質問されることもありますが、発達障害と不登校には直接的な因果関係はありません。けれども、発達障害などを抱えた子どもが、周囲の理解不足によるコミュニケーションで自己評価を下げてしまうという二次的な要因で不登校になるケースはあります」

子への心配が、状況を悪化させることも


では、不登校に親子関係や家庭環境が起因しているケースはありますか?

永島さん:
「全くないとは言えません。けれども、だからといって『こういう親や家庭環境の元で育った子どもが不登校になりやすい』という決定的なものもないんです。
ひとつ注意していただきたいのは、親御さんが不登校のわが子に神経を使いすぎてしまい、親子関係が一層ギクシャクしてしまう危険性。そうなると、子どもの状況はさらに悪化してしまい、親御さんは自分を責めてさらに精神的に追い込まれてしまうという負のスパイラルに陥ってしまいます。これは何としても避けたいところです」

不登校は真面目で一生懸命な子どもに多い


不登校になりやすい子どもの性格や傾向はありますか?

永島さん:
「真面目で、何ごとにも頑張る子どもが多いような印象を受けます。
周囲に気を遣うことに一生懸命だったり、勉強や生活態度をしっかりすることに一生懸命だったり。だからこそ、自分の『できないこと』が気になり始めて、いつの間にかそれがストレスになるのではないでしょうか。
よく言われますが、不登校の子どもに『頑張りなさい』とか『怠けてはダメ』などという声掛けは禁句です。子どもたちはすでに精いっぱい頑張っているし、頑張りすぎて息切れしている状態にあるからです」

もともとデリケートな性格に加えて、何ごとにも真正面から取り組む。だからこそ心が折れてしまったり、疲れてストレスを抱えてしまったり。そんな子どもたちに対して親はどう接すればいいのか、不登校を予防する方法はあるのか、次回も引き続きお話をお聞きします。
第2話はこちら

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永島裕(ながしまゆう)さん

永島裕(ながしまゆう)さん

一般社団法人「不登校支援センター」福岡支部カウンセラー。心理カウンセラーとして、社会人のカウンセリングやコーチング、一般企業での新人育成相談なども行う。
不登校支援センター:https://www.futoukou119.or.jp/
不登校支援センター総合事務局
TEL 0120-05-9445(受付時間/平日9:00〜18:00)