vol.15 不安に食べられる
絵本の紹介でお馴染み「からすのほんや」店主 からすちゃんと嘉麻市在住のイラストレーター maruikoちゃんの「むかし子どもだったあなたへ」
フリースクール「みんなのおうち」の子どもたちが教えてくれる、子どもとのくらしのヒントを、スクール代表のからすちゃんと一児のママmaruikoちゃんがお届けします。
フリースクールに毎日楽しく通うようになって、みんなとおしゃべりしたり、活動にも積極的に取り組むようになった頃に、突然休みがちになったり、学校へ行くものの、欠席ばかりになる子がいます。この波に、保護者の方は「何があったのだろう…」と心配されますが、私たちは「順調!」だと思っています。
このような状態になったときに本人と話すと、そのほとんどが「不安」を訴えます。何に対して不安なのだと即座に答えられる子は、ほとんどいません。「なんとなく不安」だと言うのです。
「不安」とは、そもそも漠然とした恐れや緊張などの不快な感情のこと。ですから、わからないのが当然です。だけど、何が不安なのかわからなければ、解消のしようもないわけです。
そんなとき、まずは不安だということを伝えてくれたことに「ありがとう」と言います。そして、「恐いと感じたり、体が緊張で硬くなった時は「教えてね」と言います。そして、その都度、ゆっくり時間を取っておしゃべりしながら、一緒に不安を見つけていきます。カウンセリングなどに行ってみるのも良いと思います。自分の気持ちや考えを、整理整頓するお手伝いをしてくださるカウンセラーの存在は、本当に頼りになります。今後の見通しを持てるように、カウンセラーと一緒に考えてみるのもいいですね。
このような子どもたちは、やさしい子ばかりです。身近な大人の状況を察し、気を遣って不安を話せないでいる子も少なくありません。例えば、「お母さんに話したら、心配するから」とか「お父さんに話したら、先生に怒るから」など、子どもたちは本当に大人をよく見ています。自分が話すことで、周りに不協和音が生じることを避けたいと考えている子もいます。
そして、どの子もみんな、本当は「この不安をどうにかしたい」と思っています。ある生徒に言われたことがあります。「あのときは、不安に食べられそうだった。食べられて自分がどんどん小さくなって、なくなってしまうんじゃないかって思ってた」。
大人から見たら、子どもの抱く不安は些細なことかもしれません。けれど、子どもにとっては、目の前に立ちふさがる巨大なモンスターだったりもするのです。これまで見なかったことや、なかったことにしてきた不安に、向き合うだけのエネルギーが出てきたからこその反応や波。このような出席と欠席の波が出てきたときは、子どもが前に向かって進もうとしている証拠だったりもするのです。不安を少しずつ自信に変え、これまで不安に食べられそうだった自分を大きく成長させる。そのチャンスがやってきたのかもしれませんよ。
profile
芳野仁子(よしののりこ)さん
嘉麻市生まれ。子どもの本とおもちゃの専門店「からすのほんや」店主。雑誌や新聞で絵本や子育てに関するコラムを執筆するほか、子育てに関する講座の講師も務める。
小学生対象のフリースクール「みんなのおうち」、考える力を楽しく養うキッズスクール「ひみつの国語塾」を運営。「一般社団法人 家庭教育研究機構」代表理事。
からすのほんやホームページ
http://karasubook.com/
maruikoさん
イラストレーター。福岡県嘉麻市出身・在住。展覧会などで作品を発表する他、さまざまな媒体のイラストやデザインを手がける。山に囲まれた小さな住宅街の小さな家で日々暮らしている。まるやまももこ名義で音楽活動も行っている。2015年に息子が生まれ現在子育て中。
ホームページ:
https://marumomo48.wixsite.com/maruiko