アレルギーっ子の子育て 第7話:食物負荷試験の日々

アレルギーっ子の子育て 第7話:食物負荷試験の日々

小麦と卵の食物アレルギーとアトピー性皮膚炎にぜんそく。3つのアレルギー症状を抱えた息子を育てあげたお母さんの奮闘記と先輩ママとしてのアドバイスです。


食物アレルギーの原因となる食べ物(以下、アレルゲン)を食べないことを「除去する」と言う。アレルゲンを除去するかどうか判断するために、血液検査を行って「IgE抗体」(アレルギーを引き起こすもとになる抗体)の値を調べたりする。しかし、血液検査の結果が悪くても、中には食べても症状が出ない食品もある。
その場合は、皮膚にアレルゲンをつけて調べる「プリックテスト」と、実際に食べてみてさまざまな症状が出るかどうかを調べる「食物負荷試験」という2つのテストを行う。そして、総合的に食物アレルギーを診断して除去するかどうかを決めるのだ。

「食物負荷試験」は、実際にアレルゲンを食べてみるものなので、気管支に症状が出て呼吸困難になるなど、アナフィラキシー(全身性のアレルギー反応)を起こす危険がある。だから、テストは必ず病院で行わなければならなかったし、何かしらの症状が出たら、そのアレルゲンとなる食べ物を食べてはいけないということになる。

息子は、離乳食を始めた時から卵と小麦を除去していた。小さい頃はだめでも、次第に食べられる量が増えてくることがあるため、先生に相談し、時期を見て食物負荷試験をしてもらっていた。

息子が初めて負荷試験をしたのは2歳ごろで、ゆで卵の黄身の部分を初めて食べさせた。白身はだめだったが、黄身は少しなら大丈夫だった。しかし、黄身だけ食べさせるということはあまり機会がなかった。

その後、小麦の負荷試験のためにクッキーを食べさせたが、途中で症状が出て、止めることが多かった。喘息やかゆみが出たり吐いたりした。診察室で吐いた時は、息子は恥ずかしいのと申し訳ない気持ちで泣き出した。私も先生や看護師さんに対して申し訳ないと思った。すかざす主治医が「気にしなくていいのよ」と優しく声を掛けてくれて、看護師さんも何もなかったかのようにさっさと片付けてくれたことはありがたかった。

「小学校入学前までに小麦か卵が食べられるようになればいいな」と思っていたが、無理だった。しかし、「だめだろうな」と思っていた麦ごはんの負荷試験は、クリア。小学校の給食が麦ごはんだったので、入学前ぎりぎりにクリアできたのはうれしかった。

小学校1年生の夏休みには、小麦の負荷試験を行うために病院に通った。幼稚園の頃までは通院しやすかったが、小学校に入ると行ける時間が限られるので、長期休暇の時にしか負荷試験に行けなくなった。

主治医は食物アレルギーの治療で有名な方だったので、九州各県から患者が集まっていた。予約も取りづらく、待合室で待つ時間も長い。現在は食物負荷試験を行う病院も随分増えたようだが、当時は行う病院も限られていたから、なおさらだった。
現在では、試すものも病院で用意することも多いそうだが、私は給食でよく出されるうどんを食べさせたかったので、うどんを持って行った。

まずはほんの少し、1cm程度のうどんを食べさせて、30分様子を見る。30分たっても大丈夫だったので、次は2cmほど食べさせて、また30分様子を見た。3回目になると10cm食べさせた。

食べさせては少し時間を置くというのを繰り返すので、診察室と待合室を何度も往復する。同じように負荷試験を受けているアレルギーっ子の親御さんたちとは、いつも一緒になっていたので自然と仲良くなっていた。
食べさせた後に様子を見る不安な時間の中、みんなで「うまくいけばいいね」と話しながら待っていた。

4回目で、うどんを一本食べることができた。「このくらいの量を食べられるなら大丈夫でしょう」と主治医に言われ、うどんはクリアになった。
食物負荷試験に関しては辛い思い出も多かったので、うどんを一本食べられたことが、とってもうれしかった。

クリアしたと言ってもまだ不安定で、食べ過ぎると症状が出るので、給食がうどんとパンの両方が出る時は、パンは米粉パンを持参した。でも、給食の温かいうどんが食べれるようになってほっとしたし、息子もうれしそうだった。

冒頭でも書いたように、食べられる・食べられないは血液検査の数値がすべてではないので、日頃の食事の様子などを記録しておくことをおすすめする。
毎日記録するのが苦になるようだったら無理につけなくてもいいけれど、「何が悪いのかな」と気になるようだったら、記録しておくと先生に相談しやすくなる。そうすることで、食べられる物を少しずつ増やしていけるようになるといいと思う。

幼い頃の負荷試験でも卵がダメだった息子は、大人になった今も卵を食べない。小さい頃からだったので、全然食べたいと思わないそうだ。
しかし、母としては「すき焼きの卵は食べさせたいなあ」と思ってしまう。「負荷試験をしたら、今なら食べれるかもね」と話したりはしている。

●「アレルギーっ子の子育て」第8話はこちら

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篠澤真喜子(しのざわまきこ)さん

篠澤真喜子(しのざわまきこ)さん

20代の娘と息子を持つ母。乳児のころから食物アレルギーとアトピー性皮膚炎とぜんそくを患っていた息子を育て上げた経験を持つ。その経験を生かして、エフコープの店舗で年4回開催される「食物アレルギー交流会」などで、アレルギーっ子ママの先輩として、今悩んでいるお母さんたちのサポートなどを行っている。