第6回 幼稚園や学校などでの対応と過ごし方

第6回 幼稚園や学校などでの対応と過ごし方

きちんと知って上手につき合うための食物アレルギーの話 


食物アレルギーについて知っておきたい基本のあれこれを、食物アレルギー研究の第一人者として知られる国立病院機構福岡病院小児科の医師・柴田瑠美子(しばたるみこ)先生にわかりやすく解説していただいています。今回は、食物アレルギーのある子どもへの、幼稚園や学校などでの対応や過ごし方についてお聞きします。

保育園や幼稚園、学校での、食物アレルギーの子どもへの対応について教えて

◎診断書や指示書を提出する


食物アレルギーの子どもが増えている現状を踏まえて、最近では教育機関も幅広く対応してくれます。

その子のアレルゲンとなる食品、それを食べるとどのような症状が出るのか、万が一症状が出た場合はどう対処するのかなどの情報を示した診断書や指示書を、幼稚園や学校に提出してください。
それらの情報は、子どもが安心して過ごせるよう、保育士や担当教諭の間で広く共有されます。

◎教育機関もさまざまな配慮ができるように
診断書や指示書の内容を踏まえて、多くの幼稚園や学校側で、給食の際にアレルギー児童の席を誤食や接触がないように適切な配置にするなど、より深く注意を払うことができるようになりました。

また、おやつや給食の時間も、食べこぼしなどが食物アレルギーの子どもに接触しないよう注意を促したり、食事の後に速やかに後片付けや掃除を行ったりと、安全面においてさまざまなとりくみがなされるようになっています。

他にも、親が学校に伝えておくことは?

除去食で対応できるか、お弁当の方が良いかは医師と事前に相談しておきましょう。


子どもが通っている幼稚園や学校が除去食を提供している場合は、それを利用するかしないかを医師と相談して決めます。一般食しか提供していない場合は、お弁当を持参することになります。

アレルギーを持つ子どもへの給食の対応は、自治体によっても異なりますが、例えば福岡市の場合は、給食に使用する食材を細かく記した「詳細献立表」を学校から配布しており、同様のものを市のホームページからも閲覧できます。

なお、「福岡食物アレルギーネットワーク」では、福岡市の給食献立メニューからアレルゲン食品を確認し、チェックできる「スマイル給食リンクシステム」を作成しており、1カ月ごとにメニューのチェックができます。
登録すると毎日の給食メニューが、前日にメールで届くようになっています。「福岡食物アレルギーネットワーク」のホームページにアクセスしてみてください。

福岡食物アレルギーネットワーク
https://allergyfood-fukuoka.net

修学旅行など、宿泊が必要な学校行事の際の食事は?

宿泊先での除去食がどの程度まで可能なのかを、学校を通じて事前に確認しておくと安心です。学校側も、食物アレルギーの子どもの食事に対応できる宿泊施設を選択するところが増えてきています。

とはいえ安全のため、万が一旅先で症状が出た場合の対処法についても、念のため、学校に伝えておいてください。緊急時の薬やエピペンは必ず持参しましょう。
※アナフィラキシー(全身性のアレルギー反応)に陥った際に、本人や親が打つことのできる自己注射器のこと。大腿の外側部に押し当てるように筋肉注射できる。

その他、幼稚園や学校生活を送る上で気をつけておきたいことは?


アレルゲンを扱う調理実習の際は、事前に担当教諭やお子さんにも注意を促してください。アレルギーのある食品、特に生卵や生乳製品、小麦などは直接手に触れないこと。小麦粉など舞い散るものを使うメニューは、米粉の料理に変えてもらうなどの配慮してもらってください。

また、食後の運動によってアレルゲンの吸収が高まり、アナフィラキシーショックに陥る特殊なタイプの食物アレルギーもあるので、そういったお子さんには細心の注意を。運動を優先してアレルゲンとなる食べ物を完全に除去するか、あるいは食後の運動を控えるか、どちらかの選択が必要です。

次回は柴田先生に、これまでご紹介したこと以外の食物アレルギーについてのさまざまな疑問にお答えいただきます。
「第7回 もっと知りたい、食物アレルギーのあれこれ」はこちら

profile

柴田瑠美子(しばたるみこ)先生

医学博士、日本アレルギー学会指導医、国立病院機構福岡病院小児科非常勤医師、中村学園大学栄養科学部客員教授。九州大学医学部を卒業後、九州大学医学部講師、国立病院機構福岡病院小児科医長を経て現職。食物アレルギー研究の第一人者として全国的に知られる。著書に「国立病院機構福岡病院の食物アレルギー教室」(講談社)など。