第4回 アレルギーを持つ子どもの親が心掛けておきたいこと

第4回 アレルギーを持つ子どもの親が心掛けておきたいこと

きちんと知って上手につき合うための食物アレルギーの話


食物アレルギーについて知っておきたい基本のあれこれを、食物アレルギー研究の第一人者として知られる国立病院機構福岡病院小児科の医師・柴田瑠美子(しばたるみこ)先生にわかりやすく解説していただいています。今回は、アレルギーを持つ子どものために、普段から親が心掛けておきたいことについてお聞きします。

アレルギーを持つ子どもの日常生活について、親はどんなことに気を付ければいい?

◎アレルギーのタイプを知っておく

アレルギーには4つのタイプがあります。まずは自分の子どもがどのタイプか、医師の説明をきちんと聞いておくことが大切です。

アレルゲンを口にした直後から2時間ぐらいの間にじんましんなどのアレルギー症状が出るもの、アトピー性皮膚炎を引き起こすもの、主に乳児期に粉ミルクが原因で下痢や嘔吐の症状が出るもの。さらに重度のアレルギー症状である「アナフィラキシーショック」を引き起こしやすい、なかなか治らないタイプもあります。

◎症状をこまめにチェック
食物アレルギーの症状には大きな個人差があり、皮膚や粘膜、気道、お腹など、どこに症状が出るのかはまちまちです。だからこそ、何をどのくらい食べた時にどんなふうに症状が現れるのか、どの程度ひどい状態になるのかなど、親御さんは日頃から注意深くチェックしておきましょう。

◎アレルゲンが入っていないか慎重に確認を

表示義務のある「特定原材料」だけでなく、
「特定原材料に準ずるもの」である20品目についても表示している商品もあります。


食物アレルギーの子どもの治療の基本は、アレルゲンを口にしないことです。
「特定原材料7品目(卵、牛乳、小麦、そば、ピーナツ、エビ、カニ)」を使って製造されているお菓子や加工品には、パッケージにそれらのアレルゲンを表示する義務があるので問題はありません。けれども、店頭販売のお弁当やパン、お菓子などの包装されていない食品の場合はアレルゲン表示の義務がないので注意が必要です。外食の料理についても義務はありませんので、お店の人に確認するようにしましょう。

◎“隠れアレルゲン”に注意
しょうゆの原料に大豆や小麦が使われているように、商品を見ただけでは使用されているアレルゲンが入っているかどうかわからない場合も多々あります。
多くは成分の一部に「大豆、小麦を含む」などの表示がしてあります。醤油などの大豆、小麦は症状が出ないお子さんも多いので、「一部含む」がどれに入っているか確認しましょう。

また、材料にアレルゲンが含まれていなくても、同じ場所でアレルゲンを使用した食品を作っていると、微量に混じってしまうことも。症状が重い子どもは微量でも発症することがあるので、製造環境にも気を付けてください。ただ、最近は施設内の管理がよくなったのか、施設内使用などによる事故はほとんど見られなくなりました。

◎アレルゲンを誤食しないよう


とはいえ、親の目が届かないところで、子どもが誤ってアレルゲンを口にしてしまう可能性がないとはいえません。
そのため、子どもには日頃から何を食べてはいけないのか、食べるとどのような症状が出るのかをできるだけ詳しく説明しておきましょう。万が一の誤飲に備えて、医師に薬を処方してもらっておくと安心です。かゆみ、じんましん、せきなどを抑える薬の他、アナフィラキシー(全身性のアレルギー反応)に陥った際に、本人や親が打つことのできる「エピペン」という自己注射器も広く処方されています。これは、大腿の外側部に押し当てるように筋肉注射できるアドレナリン自己注射器です。

現在、アナフィラキシーからショックになることを防ぐ治療としては、このアドレナリン治療しかありません。アナフィラキシーを発症した時に、エピペンで早急な治療を行い、救急車で医療機関を受診することで、アナフィラキシーを起こした多くのお子さんが助かっています。

次回は、子どもにわかりやすく食物アレルギーを理解してもらうための方法についてお聞きします。
「第5回 食物アレルギーを子どもに理解させるには」はこちら

profile

柴田瑠美子(しばたるみこ)先生

医学博士、日本アレルギー学会指導医、国立病院機構福岡病院小児科非常勤医師、中村学園大学栄養科学部客員教授。
九州大学医学部を卒業後、九州大学医学部講師、国立病院機構福岡病院小児科医長を経て現職。食物アレルギー研究の第一人者として全国的に知られる。著書に「国立病院機構福岡病院の食物アレルギー教室」(講談社)など。