第5回 食物アレルギーを子どもに理解させるには

第5回 食物アレルギーを子どもに理解させるには

きちんと知って上手につき合うための食物アレルギーの話


食物アレルギーについて知っておきたい基本のあれこれを、食物アレルギー研究の第一人者として知られる国立病院機構福岡病院小児科の医師・柴田瑠美子(しばたるみこ)先生にわかりやすく解説していただいています。今回は、子どもにわかりやすく食物アレルギーを理解してもらうための方法についてお聞きします。

食物アレルギーのことを子どもにわかりやすく理解させるには、どうすればいいでしょうか?

◎食物アレルギーがどんな病気なのか説明する


まず、食物アレルギーがどんな病気なのかについて子どもにわかりやすく伝えておきましょう。

例えば、とてもシンプルに説明するとすれば、食物アレルギーとは「本来なら、食べると私たちの体の栄養になる食品なのに、体がそれを悪いものだと勘違いして攻撃してしまうために、いろいろな辛い症状が出てしまう」状態のこと。
このような内容をできるだけかみくだいて、子どもが理解できる言葉で伝えてください。

最近は、食物アレルギーについて描かれた子ども向けの漫画『食物アレルギーのひみつ』(発行:学研プラス/協力:日本ハム未来財団)や絵本『ちかちゃんのきゅうしょく』(発行:かもかわ出版/著:光本多佳子/イラスト:川本 浩 )なども発売されていますので、それらを一緒に読みながら説明するのもいいでしょう。

◎食べてはいけないものをしっかり伝える
食物アレルギーがどのような病気か説明した上で、その子が口にしてはいけない食べ物は何かを教えるようにします。卵、牛乳、小麦といった食品はもちろん、それらを使った食べ物にはどのようなものがあるかなども、絵や写真を見せたりしながら、できるだけ細かく伝えるようにします。

また、まだアレルギーを自分で伝えられない乳幼児が、食べられない物をもらってしまうことがないように、食物アレルギーとアレルゲンのことをイラストで表示した「食物アレルギーサインプレート」というものがあります。
これは、食物アレルギーの原因となる主な食品を、誰にでもわかるよう絵にしたもの。切り取ってお子さんのバッグなどに付けておくことで、相手に食物アレルギーがあることを伝えることができるます。ただし、このサインプレートは、医師から直接配布される場合のみに使用することができるので、担当医に聞いてみてください。

子どもが成長すると、だんだん親の目が届かないところで食べ物を口にする機会も増えてきますので、その子が食べられない食品を示した上記サインプレートやメモを携帯させるなどして、食べ物に対して常に注意を払うようにしてください。

もっとも、子ども自身が一番、発症した時のつらさをわかっていることが多いので、きちんと伝えておけば「食べられない」と言われた食品を食べたがるケースはあまりないようです。

◎食べるとどのような症状が出るかを知らせる

アレルゲンとなる食品を食べると、その子にどのような症状が出るのかについても言い聞かせておいてください。その際、「皮膚にブツブツができる」「目が真っ赤になる」「お腹が痛くなる」「気分が悪くなって吐く」「鼻水がいっぱい出る」など、できるだけ子どもに理解しやすい言葉で説明すること。

子どもに危機感を持たせるために、アレルゲンを口にするとものすごく苦しくなってしまうこと、学校にも行けなくなってしまうかもしれないことなど、多少強く伝えておいてもいいと思います。

◎きょうだいや仲のいい友だちにも話しておく
きょうだいや友だちの理解はかなり重要です。誤食を防ぐために、その子が何を食べればどのような症状が出るかは、常にそばにいることの多いきょうだいや仲のいい友だちにも話しておきましょう。周りの子どもたちが理解し、時に注意を促してあげられるような環境づくりを整えておくと安心です。最近出版された絵本『いっしょのちがうもの』(発行:絵本塾出版/著:さるびあ亭 かーこ/監修:武内澄子/イラスト:エイイチ)は、学校給食が食べられない子には、弁当が必要なことを理解してもらうためのわかりやすい絵本です。

アレルギーの子どもに日頃から注意させたいことは?

◎おやつなどは持参させる


友だちの家に遊びに行った時に出されたおやつや、親が見ていないところでもらったものを誤って食べてしまい、アレルギー症状を発症する子どもは少なくありません。このような事態を防ぐために、子どもには日頃からもらったものは食べないように言い聞かせておいてください。安全のために、おやつは持参させるようにしましょう

◎必ず親に食べていいものか確認するクセ付けを
親が作った食事以外のものを子どもが口にする際、親がそばにいるときは必ず食べていいかを確認するようクセ付けをします。食物アレルギーは時に命に関わることもあります。子ども自体が食べ物に慎重になり、「自分には食べられないものがある」と認識することが大切です。

◎調理中に子どもを台所に近づけない
調理中は子どもを台所に近づけないよう気をつけてください。卵や牛乳は周囲に付着していても判別しづらく、誤って触ってしまう危険性があります。また、ピーナッツや小麦粉は空中に飛び散ったものがごく微量でも、触れたり吸い込んだりすると、アナフィラキシーを起こすこともあるので、それらの食物アレルギーのある子どもがいる家庭は要注意です。

次回は、食物アレルギーを持つ子どもへの保育園や幼稚園、学校での対応や過ごし方についてお聞きします。
「第6回 幼稚園や学校などでの対応と過ごし方」はこちら

profile

柴田瑠美子(しばたるみこ)先生

医学博士、日本アレルギー学会指導医、国立病院機構福岡病院小児科非常勤医師、中村学園大学栄養科学部客員教授。九州大学医学部を卒業後、九州大学医学部講師、国立病院機構福岡病院小児科医長を経て現職。食物アレルギー研究の第一人者として全国的に知られる。著書に「国立病院機構福岡病院の食物アレルギー教室」(講談社)など。