第7回 もっと知りたい、食物アレルギーのあれこれ
きちんと知って上手につき合うための食物アレルギーの話
食物アレルギーについて知っておきたい基本のあれこれを、食物アレルギー研究の第一人者として知られる国立病院機構福岡病院小児科の医師・柴田瑠美子(しばたるみこ)先生にわかりやすく解説していただいています。今回は、これまでご紹介したこと以外の食物アレルギーについてのさまざまな疑問に、柴田先生にお答えいただきます。
粉ミルクでアレルギーと診断されたらどうすればいい?
粉ミルクや牛乳は乳幼児が最もアレルギーを引き起こしやすい食品のひとつですが、アレルギー用のミルクで代用できますので、心配はいりません。アレルギー用ミルクは栄養も豊富で、アレルゲンとなる成分を分解したさまざまな種類のものが市販されています。その子にとって安全なミルクを医師と相談して選びましょう。
食物アレルギーの発症を予防するために、離乳食の開始を遅らせてもいい?
食物アレルギーを心配する親御さんからそのような声をお聞きすることがありますが、離乳食を始める時期を遅らせるのはおすすめできません。
「きょうだいに食物アレルギーのある子がいる」「アトピー性皮膚炎である」といったアレルギーのリスクがあるお子さんの場合でも、離乳食のスタートを遅くすると、逆に食物アレルギー発症率が高くなることが報告されています。
ただし、アレルギーのリスクがあるお子さんの場合は、慎重さが必要です。医師に相談して、どのような食べ物をどのくらいの量からスタートすればいいのかなどの指示に従ってください。例えば、卵アレルギーが心配な場合も、離乳食では固ゆでの卵黄から開始できることが多いようです。
家族旅行に行く際、宿泊先での食事はどうすればいい?
ホテルや旅館、レストランなどでも、最近はアレルギーに配慮したメニューが用意されているところや、除去食の相談ができるところが増えてきました。
ですから、事前に子どもの食物アレルギーの内容を伝えて対応してもらえるかを確認してみてください。
ただし、加工品に含まれているアレルゲンや調味料まできちんと配慮されているとは限りませんので、患者さんによってはどこまで徹底されているかも確認が必要です。
もし、店側で準備してもらうのが難しい場合は、あらかじめ除去食を持参することになりますが、お弁当などは傷んでしまうことがあるので要注意。荷物にならずに宿泊先でも食べやすく、子どもの好きなアレルギー対応のレトルト食品などを用意するといいでしょう。
災害時にはどのようなアレルギー対応食品をそろえておくといい?
食物アレルギーに対応した食品で、長期間保管できるもの(レトルト食品など)を常にストックしておきましょう。乳児の場合はアレルギー用のミルクなども忘れずに。
万が一、災害後に避難所などで過ごすことになった場合は、配られた食べ物を誤って口にしないよう、子どもが食べられない食品をゼッケンなどにわかりやすく表示しておくことをおすすめします。第5話で紹介した「食物アレルギーサインプレート」などを使って、アレルゲン食品に×をつけた絵を張り付けておくのも、わかりやすいと思います。
7回にわたって柴田先生にお聞きした食物アレルギーのさまざまなお話、参考になったでしょうか? アレルギーのある子どもや家族が、毎日楽しく、安全に暮らせるよう、今後も情報を提供していきます!
食物アレルギーについて、より詳しく知りたい方は、柴田瑠美子先生の著作『国立病院機構福岡病院の食物アレルギー教室』(講談社)もどうぞ。
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profile
柴田瑠美子(しばたるみこ)先生
医学博士、日本アレルギー学会指導医、国立病院機構福岡病院小児科非常勤医師、中村学園大学栄養科学部客員教授。九州大学医学部を卒業後、九州大学医学部講師、国立病院機構福岡病院小児科医長を経て現職。食物アレルギー研究の第一人者として全国的に知られる。著書に「国立病院機構福岡病院の食物アレルギー教室」(講談社)など。
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