vol.7 「くそばばぁ」と言われても
絵本の紹介でお馴染み「からすのほんや」店主 からすちゃんと嘉麻市在住のイラストレーター maruikoちゃんの「むかし子どもだったあなたへ」
フリースクール「みんなのおうち」の子どもたちが教えてくれる、子どもとのくらしのヒントを、スクール代表のからすちゃんと一児のママmaruikoちゃんがお届けします。
親と子に関わって、今年で30年になる私。親子の関係も、時代と共に変化してきたことを感じています。
最近よく耳にするのは、保護者の「子どもが〇〇と言っているので」という言葉。「子どもが雪が降っているから休むと言っているので」と言って欠席。「子どもが女の先生じゃないと嫌だと言っているので」と言って、担当の先生の変更を申し入れされる。
一見、子どもの意思を尊重しているように思われますが、私はそこに問題を感じています。きっと、子どもに関わっていらっしゃる方で、これを読みながらうなずいていらっしゃる方も多いことでしょう。
もちろん、子どもの意思を尊重することは、とても大切なことです。けれど、子どもたちはまだ育ちの最中です。経験も知識も、まだ足りないまま、限られたものの中で判断をしているわけです。
周囲の大人は、さまざまな可能性や方法を提案し、自らの経験を語り、もしかしたら時に子どもの考えを軌道修正し諭すことも必要かもしれません。
そうなると、子どもにとってあなたは、嫌なことを言う人になります。いわゆる「くそばばぁ」です。私も実際に「くそばばぁ」と言われたことがあります。
でも、「うざい」と言われて心の距離を置かれたり、「くそ魔女」と言われて、もはや人間ではなくなっているより、ずっといい。「くそばばぁ」と言って、私と真っ向から向き合ってくれていることに、喜びさえ感じるのです。
以前、私に「くそばばぁ」と言っていた子が、「あの時、おばちゃんが言ってくれたことの意味が、今はわかります」と手紙をくれたことがありました。
心地良い言葉だけをかけてくれる優しい大人の皮をかぶった「無責任」を止めた時、子どもとの心の距離は最も近くなるのかもしれません。「くそばばぁ」と言われても、あなたのことを心底大切に思うからこそ、伝えたいことがある。それが大人の「責任」なのではないでしょうか?
この後も(今もたまに)母とは何度もぶつかり喧嘩してますが、関係が悪くなったことはありません。60代になった現在の母は「私は子どもに『くそばばぁ!』なんて言われたことないのよ、すごいやろ〜」って。全力で子育てした母にとってはそんな言葉どうってことないから覚えてないのか、それとも忘れっぽいのだけか?(笑)
いつになっても一枚上手なかわいい人です。〈maruiko〉
profile
芳野仁子(よしののりこ)さん
嘉麻市生まれ。子どもの本とおもちゃの専門店「からすのほんや」店主。雑誌や新聞で絵本や子育てに関するコラムを執筆するほか、子育てに関する講座の講師も務める。
小学生対象のフリースクール「みんなのおうち」、考える力を楽しく養うキッズスクール「ひみつの国語塾」を運営。「一般社団法人 家庭教育研究機構」代表理事。
からすのほんやホームページ
http://karasubook.com/
maruikoさん
イラストレーター。福岡県嘉麻市出身・在住。展覧会などで作品を発表する他、さまざまな媒体のイラストやデザインを手がける。山に囲まれた小さな住宅街の小さな家で日々暮らしている。まるやまももこ名義で音楽活動も行っている。2015年に息子が生まれ現在子育て中。
ホームページ:
https://marumomo48.wixsite.com/maruiko