どんな備えが必要? 知っておきたい防災対策 第1話
2017年の九州北部豪雨や、2018年の西日本豪雨、そして記憶に新しい今年2020年7月の熊本を中心とした豪雨など、近年、毎年のように大規模な自然災害が続いています。
特にこの7月の豪雨に際しては、コロナ禍での防災対策について考えておく必要性を感じた方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、気象予報士であり防災士のRKB毎日放送の気象キャスター・龍山康朗(たつやまやすあき)さんに、大雨・台風シーズンに備えた準備や、コロナ禍での防災対策、子どもやお年寄りがいるご家庭での注意点などをお話しいただきました。
シリーズ1回目の今回は、浸水害が迫ってきた時の対応についてご紹介します。
「避難所への避難」は必ずしも正解ではない
龍山さん:
「毎年のように豪雨被害が発生している中、自分や家族の周りにも危険が迫ったらと不安になることも多いかと思います。さらに今年は新型コロナウイルスの感染拡大で、避難するにも3密を避ける必要があるなど、防災の形も変わってきています。
そもそも、避難というのは避難所に行くことだけを指すのではない、ということをご存知でしょうか。例えば水害の場合、高台の自宅やマンションの中層階以上に住んでいる方などは、わざわざ避難所に移動するより家の中にいた方が安全です。避難とは“難”を“避”ける、という意味であり、災害時に、ご自身やご家族が最も難を避けることができる行動をとるということなのです」
● 自宅内の安全な場所で難を避ける
● 親戚・知人の家・ホテルで難を避ける
● 車中で難を避ける
● 避難所で難を避ける
「特に浸水害の場合、外に出ない“在宅避難”が適しているケースが多いのですよ。」と龍山さん。「自分の住んでいる場所の浸水被害危険度は高いのか、そして住まいの高さまで水位が上昇する可能性はあるか、日頃から自身で確認しておくことが大切」だと言います。
龍山さん:
「3密を避けるという意味でも無理に避難所に行かず、ご自宅や勤務先周辺の最新のハザードマップを確認した上で、安全な避難先を決めておくことが重要です」
<分散避難の例>
お年寄りや小さな子どもがいる家庭は早めの避難を
龍山さん:
「2019年から、内閣府は避難行動の目安となる5段階の“大雨警戒レベル”の運用を始めました。レベルごとのとるべき行動が直感的に伝わるように工夫されているので、自分たちがどのレベルで避難行動をとるか、避難方法をどうするかなどを事前に決めておきましょう。
ただし、小さなお子さんや高齢者がいる家庭で自宅を離れる必要がある場合は、警戒レベル3の段階で避難を始めたほうがいいでしょう。大雨警戒レベルはニュースなどで必ず発表されますので、チェックを忘れないようにしましょう」
龍山さん:
「避難の鉄則は、①暗くなる前に、②浸水する前に、です。水害の心配がある場合、5段階の大雨警戒レベルと合わせて、気象庁のホームページにある〝危険度分布〟という情報で、自分がいる場所の直近の雨の降り方や浸水害の状況をチェックできます。家を出て避難をする必要がある場合、避難のタイミングや状況を確認するのにとても便利です。
また、これからの季節に心配な台風の場合、大雨とは違い予測の精度が高いため“いつ来るか”がほぼ正確にわかります。気象情報をチェックし、被害が及びそうな場合は早めに避難の準備をしておきましょう」
気象庁ホームページはこちら
コロナ禍での避難となると、小さなお子さんがいる家庭などは車中避難を選択することもあると思います。車中避難を検討する場合は、前もって安全な移動経路や駐車場所の安全を確認しておく。そして、家族で話し合い、共有する。どの災害の場合でも、“自分で確認・事前の準備”を怠らないことが大切です」
ハザードマップで自分の家が危険かどうかを知っておくこと。家を出て避難する場合の避難場所や経路をあらかじめ決めておくこと。難を避けるためには、事前の準備が何よりも大切だということがよくわかります。
次回は、防災の備えについて、詳しくお話しいただきます。
profile
龍山康朗(たつやまやすあき)さん
RKB毎日放送 報道部 気象キャスター 専門部長(気象・防災担当)
九州大学大学院航空宇宙工学修了。1991年RKB毎日放送入社。1995年に気象予報士資格を取得し、日本初のアナウンサー気象予報士に。現在、「今日感テレビ」のお天気キャスターをはじめ、ラジオ番組や講演会などでも活躍中。
著書に「たっちんの気象転結―これであなたもお天気雑学博士!」。