のんちゃんの「てくてく旅」vol.1  福岡のフリースクール・不登校支援の現場から

のんちゃんの「てくてく旅」vol.1  福岡のフリースクール・不登校支援の現場から

福岡県内のフリースクールなど、不登校の子どもたちの支援を行っている芳野仁子(よしののりこ)さん(愛称“のんちゃん”)が、「多様な学び」を選択する子どもたちの応援をしている、ステキなおとなに出会う「てくてく旅」!。

vol.1 「親の笑顔は子どもの笑顔につながっている」
記念すべき初回は、県内各地で「omimi(おみみ)かふぇ」を運営されている、「えがおの会」代表の杉浦しのぶさんに会いに行きました。

Omimiかふぇとは?

Omimiかふぇってどんなことしているの?
杉浦さん:不登校や行き渋り、発達に特性がある、障がいがあるお子さんを育てている保護者の方が、おしゃべりできる場所を提供しています。お母さんだけでなく、お父さんもいらっしゃいますよ。
Omimiかふぇでは、同じ想いや子育ての悩み、課題を抱えた方のお話を聴くことができるだけでなく、経験豊かなサポーターがあなたの想いを受け止めます。

参加してみたいけど、ちょっとドキドキ…
杉浦さん:こういう集まりに参加するって、みなさん最初はちょっと気が引けてしまうかもしれませんよね。参加する前は「こわいなーって思っていました」という方もいらっしゃいます。「何を言われるんだろう?」「責められるかもしれない」って考えてしまう。
でも、実際に参加された方からは「あたたかく迎えられた」「ホッとして涙腺まで緩んじゃった」と、笑顔で帰って行かれる方がほとんど。近況を話す方もいるし、何も話さなくったっていい。今を共に感じてくれる人がここにはいます。

活動のきっかけ

春日市(筑後地区)・福岡地区
「えがおの会」代表 杉浦しのぶさん

ごめんね…
杉浦さん:高校生だった私の娘が不登校になりました。通っていた高校を退学し、別の高校を受験することになったのですが、受験の日、渋滞に巻き込まれて遅刻してしまうというハプニングがありました。受験会場に入れず、私は駐車場で「お母さんのせいだね。ごめんね」と娘に謝りました。でも娘は「私が行きたくなかったから、もたもたしたのが悪い」と、何度も首を横に振りました。
このとき私は、初めて受験を望んでいなかった娘の本当の気持ちを知り、その場で抱き合って泣きました。
このことがきっかけで、これまで私が娘に対して「自分憲法」を振りかざしていたことに気付き、「どうして?」と外に向いていた矢印が、自分の内なるものに向くようになっていきました。それが、今の活動につながっています。

誰かと話す場の大切さ

杉浦さん:熱々のコーヒーが入った湯飲み。「こんなの熱くて持てない!」と怒りたくなるけれど、他の席に座っている人から見ると、実はそれはマグカップで、取っ手が見える。「取っ手を持ったら熱くないよ」と周りの声掛けでそれに気付かされる。
そんなふうに、物事の捉え方って誰しも癖みたいなものがあって、同じ事象も周囲の人たちから見ると、違って見えたりする。そういう意味で、誰かと話す場って大切だなって思うんです。
Omimiかふぇには「お茶を飲みに行ってみようかな。」そんな気軽な気持ちで来ていただけたら、私たちもうれしいです。

「えがおの会」の名前の由来

かふぇには無料で楽しめるゲームも用意されています

杉浦さん:お子さんが学校に行けなくなると、親はどうしても暗い顔になっちゃう。私自身もそうでした。笑顔になったり、おしゃべりすることを忘れがちになってしまい、暗い顔になってしまう。そんな保護者の方に笑顔になってほしいという願いを込めて命名しました。
でもまあ「笑顔になってください」って言われてもねぇ。「子どもが元気じゃないのに、笑顔になるって、どういうこと?」って戸惑われる方もいらっしゃって。
そういう時って多分、家庭の中でも笑顔がなくなってきていると思うんです。
だからこそ、Omimiかふぇに来たときだけは、自然と愚痴を言いながら、悩みを語りながら、次第に笑顔になれる…そういう場所。だって親の笑顔は子どもの笑顔につながっていると思うんです。

親はロールモデル

第2回おしゃべりクッキングで作った「サーターアンダギー」

杉浦さん:8月から、新しい取り組みにもチャレンジしています。「しのぶさんのおしゃべりクッキング」っていうんですが、実は私、料理を作るのが好きなんです。手抜きレシピなんだけれどね。「おしゃべりクッキング」では、少人数で料理して、食べて、笑って。とにかく楽しいの。
子どもが不登校だからって、親が全部我慢して苦しむのではなく、お父さんお母さんも楽しいと思うことをしていいんだって思うんです。親が楽しそうにしていたら、子どもたちも「人生って楽しいのだな」って思ってくれるはず。だって親は子どもの最も身近なロールモデルですから。
これからも、保護者の方がもっと楽しめて、更に笑顔になれるお手伝いができたらと思っています。

保護者の方が「うれしいな」と思う子どもの変化は、「笑顔」と「その日にあったことを楽しそうに話してくれること」とよく言われます。もしかしたら、子どもたちも同じなのかもしれないですね。お互いの笑顔が、お互いを幸せにする。家庭って、家族って、あらためて良いものだなぁと思いました。
そして「しのぶさんのおしゃべりクッキング」は、新しい応援の形のようでいて、実は私たちが子どもの頃、当たり前にあったご近所付き合いに似ているなって思いました。古くて新しい人生の楽しみ方なのかもしれませんね。

団体紹介

施設情報

Omimiかふぇ(運営:えがおの会)

Omimiかふぇ(運営:えがおの会)

【開催場所】福岡県内各所で開催しています。開催情報は下記の公式Instagramでご確認ください。
https://www.instagram.com/hogoshashien.egaonokai/

※事前予約や申込不要。時間内はいつでも入退室可能です。

【問い合わせ先】
TEL:090-4513-7531
Mail:shinonee3@gmail.com

のんちゃんプロフィール

profile

のんちゃん こと 芳野仁子(よしののりこ)さん

のんちゃん こと 芳野仁子(よしののりこ)さん

嘉麻市生まれ。「一般社団法人 家庭教育研究機構」代表理事。小中学生対象のフリースクール「みんなのおうち」を運営する傍ら、福岡県内各地のフリースクールを訪ね、支援する活動にとりくむ。

一般社団法人 家庭教育研究機構ホームページ
https://r.goope.jp/minnnanoouchi/