一人じゃないよ！産後ママの心に寄り添う助産師・井手先生のおっぱいと育児の話①

母乳が出ない、おっぱいが痛む、飲んでくれない、泣きやまない。
出産という大仕事のあと、寝る暇もなく新しい命と向き合ってヘトヘトになった産後ママの体と心を、少しでも楽にしてあげられたら…。
今回は、福岡県筑紫野市の母乳育児相談室「ベビーフェリス井手」で19年に渡り母乳育児をサポートしてきたベテラン助産師の井手敬子（いできょうこ）さんに、助産師という職業について、また先生ご自身の育児体験について、お話を伺いました。

――助産師という職業について、また、井手先生の母乳育児相談室「ベビーフェリス井手」について教えてください。

井手先生：
助産師になるには、看護師免許を取得した後、助産師免許を取得します。
助産師のほとんどは病院で勤務していますが、教育の現場、県の保健所、市町村の保健センター、地域で助産院や子育てサロンを開業していたりと、活躍の場は多岐に渡ります。
サポートの対象は、赤ちゃんからすべての女性と、その家族。
仕事の内容は、妊活・妊娠・出産・産後のケアサポート、育児や子どもの相談・サポート、性教育や思春期・更年期の相談、これ以外にもたくさんあります。
その中で私は、母乳育児相談室「ベビーフェリス井手」を開業し、お母さんたちへの母乳マッサージや授乳レッスン、育児相談やご家族への支援を行っています。

――先生はなぜ、助産師になろうと思われたのですか。

井手先生：
看護学生時代に、実習で産婦人科に行ったことがきっかけです。初めて出産の場に立ち会い、お産の神秘と命の尊さに感動するとともに、助産師の仕事ぶりに感銘を受け、助産師になる決意をしました。

――助産師として、母乳育児のサポートに力を入れるようになったきっかけは？

井手先生：
自分自身の母乳育児に手こずった経験が大きいですね。
助産師になり、福岡市内にある総合病院の産婦人科病棟に勤めている時に、長男を出産しました。
当時はまだ育児休暇制度が浸透しておらず、産後4カ月で職場復帰。
朝は、保育園の開園と同時に子どもを預け、夕方のお迎えは、閉園に滑り込むという生活でした。
長男はミルクが嫌いで、園では白湯や果汁で過ごし、夜通し母乳を飲むという授乳スタイルだったため、乳房トラブルに悩まされました。

育児でも、仕事で赤ちゃんのお世話には慣れていたものの、実際の子育てとは大違いで、「置くと泣く」「夜泣きで寝てくれない」「離乳食が進まない」など、世のお母さんたちと同じように不安ばかりでした。
そんな時、先輩助産師が開業している助産院でケアしてもらい、乳房トラブルも育児の不安も解消されたんです。
そこから「自分のおっぱいは自分で解決できるようになりたい」と思い、母乳育児のことや、おっぱいマッサージの勉強をしに、たくさんの師匠のところへ習いに行きました。

――おっぱいケアのスキルを磨かれた後は、助産師としてすぐに独立開業されたのでしょうか。

井手先生：
いえ、当初は独立する予定はなく、次男を出産後、個人の産婦人科で7年半、助産師業務と母乳外来に携わっていました。
育児と仕事に追われ頑張りすぎてしまい、体調も思わしくなく、少し休もうと思って退職しましたが、勤めていた時にケアをしていたお母さんたちから声をかけていただいて、出張助産師として、母乳育児のお手伝いをしていました。
そのうち少しずつ依頼が増え、お母さんたちからの後押しもあり、開業を決意。それから月日が流れ、今年で19年目を迎えました。
こんなに長く続けさせていただいて、今まで来てくださったお母さんたちへの感謝の気持ちでいっぱいです。

――今後、やってみたいことなどありますか？

井手先生：
体力が続く限り、この仕事を続けたいと思ってます。
その上で、お母さんたちが「ゆっくりお昼寝したい」「ゆっくりご飯が食べたい」という要望も叶えたい。
核家族だったり、実家が遠くてサポートが少ないお母さんたちに、実家のようにくつろげる、ほっとできる居場所づくりができたらと思っています。