一人じゃないよ!産後ママの心に寄り添う助産師・井手先生のおっぱいと育児の話②

一人じゃないよ!産後ママの心に寄り添う助産師・井手先生のおっぱいと育児の話②

助産師として、長年産後ママの母乳育児相談と心のケアに当たってきたベテラン助産師・井手敬子(いできょうこ)さんへのインタビュー、第2回目。
今回は、妊娠中から知っておきたい産後のおっぱいと心の変化について、さらに、すべての女性に知ってほしい乳がん自己検診の方法などについて、詳しくお話を伺いました。

◎前回のインタビュー記事はこちら

「かかりつけ助産師」を持ってほしい


――「ベビーフェリス井手」を訪れるママたちは、どんな悩みを抱えていらっしゃるのですか?

井手先生:
「おっぱいが痛い」「乳頭が痛い」「乳首が切れた」「赤ちゃんが吸い付いてくれない」「母乳の量を増やしたい」「出過ぎて困る」「断乳や卒乳を相談したい」など、いろいろな相談があります。
初めての出産・育児なので学んでおきたいという妊婦さんはもちろん、「上の子の時には母乳育児ができなかったけれど、今度こそは」と相談にいらっしゃる妊婦さんもいらっしゃいますよ。
よく「おっぱいが痛くないと来ちゃいけませんか?」と聞かれますが、そんなことはありません。私は常々、おっぱいの痛みだけでなく、なんでも気軽に相談できる「かかりつけ助産師」「MY助産師」を持つことをおすすめしています。

育児は、お母さん一人では大変です。パパやご家族の支えが大きいのはもちろんですが、その上で、専門家である「かかりつけ助産師」や「MY助産師」の存在があれば、なお安心です。
特に最近はコロナ禍で里帰りもできず、入院時や出産時の家族の付き添いが制限される中で出産し、退院してからもサポートが得られないお母さんが増えています。孤独な育児で不安でたまらないと思います。
そんなお母さんはぜひ、家の近くにいる助産師を見つけてくださいね。

――井手先生の母乳マッサージは痛くないという評判を聞きました。何かコツがあるのでしょうか。

井手先生:
自分がおっぱいで苦しんだときに、あれこれと痛くない搾り方を試した経験が生きているのかなと思います。
とはいえ、お乳の穴よりも大きな塊が詰まったり、お乳の穴に膜が張って塞いでいる場合には痛みを伴うこともあります。そんな時は、お母さんを励ましながら施術するようにしています。

――これまでの経験で、特に印象に残っている方はいらっしゃいますか。

井手先生:
だいぶ前のことですが、よく泣く女の子の赤ちゃんがいました。お母さんはとても頑張っていらっしゃいましたが、私から見ても大変そうな子育てでした。
とってもパワフルに泣いていたので、私はその赤ちゃんに「そんなにパワ―があるんだから、助産師になってね~!」と話しかけていたくらい。
すると、その子が高校生になって「助産師になりたいと言っている」と、お母さんから連絡があったんです。
後日、お母さんとその子が私に会いに来てくれて、助産師の仕事のことを聞き、メモを取って帰りました。翌年、その子はめでたく大学の看護学部に入学し、助産師をめざすことになったんです。

赤ちゃんの時だけでなく、こうして大きくなってまた来てくれると、嬉しいですね。最近は、当時赤ちゃんだった子が、お母さんやお父さんになって来てくれるようにもなりました。長くこの仕事をさせていただいているおかげですね。

変色した壁は、歴代の赤ちゃんたちが爪でカリカリと引っかいて遊んだ跡なのだそう!

断乳・卒乳したら乳がん検診と毎月の自己検診を

――今、子育ての真っ最中にあるママたちに何かアドバイスをいただけますか?

井手先生:
私がお母さんたちにお願いするのは、授乳期を終えたら乳がん検診を受けて、今のおっぱいの中に、しこりがないということの確認をしておくこと。
もし、しこりがあるなら、医師にそれが何であるかと、場所と大きさを聞いてくること。
そしてそれを元に、次の検診に行くまでの間、毎月自己検診をして、そのしこりに変化がないことを確認し、もし変化があればすぐに受診をすること。

乳がんは、日本人女性の病気の罹患率の中で1位です。
発症頻度も、10年程前には「今、30人に1人乳がんになっているから気を付けておいてね。」と言っていたのが年々増加し、近年は12~13人に1人と言われています。
いつ自分が乳がんになるか分かりません。

でも、毎月自己検診をしておけば、早期に発見でき、命に関わる前に治療ができる可能性も大いにあります。
子どもを産んだ以上、その子が大きくなるまでお母さんは元気でいてもらいたい。
もし、子どもが女の子なら、その子が大きくなってお母さんになった時に、その子育てを手伝ってあげてほしい。
子育てをするときに、母親の存在が大きな心の支えになると思うから。

――自己検診は、どのように行えばいいのでしょうか。

井手先生:
異変があった時に、早く気付けるように、日頃からおっぱいを触って、様子を知っておくことが大切です。
乳がんになった女性からの相談で「自分が乳がんになるとは思わなかった」という言葉をよく耳にします。
決して他人事ではありません。
また、「乳がん検診を受けていたのに、がんになったんです。」とも。
そうですよね。でも検診はがんを予防しているわけではありません。
それでも、定期的に検診を受け、毎月自己検診をして、がんになっても早期発見・早期治療ができるようにお願いします。

★★乳がん自己検診の方法はこちら★★
ブックマーク登録して、月に一度の自己検診にお役立てください。

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井手敬子(いできょうこ)さん

井手敬子(いできょうこ)さん

助産師、母乳育児相談室「ベビーフェリス井手」代表、国際中医薬膳管理師。母乳と育児に関するよろず相談を受け付ける。母乳マッサージや授乳レッスンも実施。

<ベビーフェリス井手 母乳育児相談室>
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<Instagram>
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