やさしい声かけがしたくなる『どれみふぁけろけろ』
書店「からすのほんや」店主・からすちゃんが選ぶ、子どもと、本と(43)
わが家は山沿いで、田んぼに水が入るのが早め。ですから、かえるさんたちが鳴き始めるのも、早い気がします。雨の降る日は、足元にいるかもしれない小さなあおがえるさんに気をつけてお散歩します。そんな時に思い出すのは、この幼年童話。
主人公は泳ぎの苦手な、たっくん。たっくんは、小学校でプールがある日は気乗りせず、元気がありません。(読者のみなさんの中にも気持ちがわかる人、いるんじゃないかな?)ある日、学校の近くの池のそばにしゃがみ込んで
「かえるはおよげていいなあ。ぼくもかえるになりたいなあ。」
とつぶやきます。すると後ろの草むらから鐘の音がします。見ると、そこにはかえるの学校がありました。しかも、「かえるになりたいなあ。」と言ったたっくんの言葉が、先生に聞こえてしまっていて、たっくんも生徒になることになりました。かえるの学校では、立派なかえるになるための勉強をします。立派なかえるは、歌がうまくて、泳ぎが上手でなければならないのだそうです。
まずは、歌の練習から始まります。たっくんは実は歌も苦手です。かえるは雨と友達。雨雲がやってきて、雲の上で雷がぴかっと光っても、ゴロゴロ鳴っても、雨が降り出しても歌い続けなければなりません。たっくんは歌うことができたでしょうか…。
次は、いよいよ泳ぎの練習です。たっくんは、かえるのような水かきもないし、泳ぐのが苦手。困っていたら、先生が良い方法を教えてくれました。どんな方法だったと思いますか? 泳げるかなと心配でしたが、みんな池の周りに並んで、いざ飛び込もうとした時、草むらがゴソゴソ…。そこに現れたのはヘビです。さあ大変!
いろいろあって小学校に遅刻しちゃった、たっくん。プールの授業はどうだったかな? 続きが気になる人は読んでみてね。
この本は、何かが苦手だったり、できなくて尻込みしちゃっている子に、かえるの学校の友達や先生みたいな、声掛けができる自分でいたいなって、思わせてくれます。おとなの私たちに、子どもへのやさしい声かけを思い出させてくれるすてきな作品です。
今回ご紹介した本
『どれみふぁけろけろ』
作・絵:東 君平
あかね書房
profile
芳野仁子(よしののりこ)さん
子どもの本とおもちゃの専門店「からすのほんや」店主。雑誌や新聞で絵本や子育てに関するコラムを執筆するほか、子育てに関する講座の講師も務める。
小学生対象のフリースクール「みんなのおうち」、考える力を楽しく養うキッズスクール「ひみつの国語塾」を運営。「一般社団法人 家庭教育研究機構」代表理事。
からすのほんやホームページ
http://karasubook.com/