きみのかぞくはどんな形?『いろいろ いろんな かぞくの ほん』
書店「からすのほんや」店主・からすちゃんが選ぶ、子どもと、本と(37)
先日、夫とその友人たちと、子ども時代の話で盛り上がりました。夫が小学生だったある夏休みに、お友達のおうちでお昼をごちそうになった時のこと。おつゆにそうめんをつけて、勢いよくすすったら、そのおつゆにらっきょうの漬け汁が入っていて、酸っぱさが衝撃だったのだとか。私が「うちのじいちゃんは、焼いた鯛とマヨネーズを入れてそうめん食べていたよ」と話すと、他の人からも各家庭のいろいろな食べ方を聞くことができ、話が盛り上がりました。
さて、私は家族のいろいろについて、子どもたちから質問を受けることがあります。「僕の家だけ、ゲームが買ってもらえません。どうして?」とか、「うちではペットは飼えない。みんな飼ってるのに、どうして?」など、おうちの決まり事などに不満を抱いていることもしばしば。その声の中で気になるのが「みんな~」という言葉。子どもたちの持っている世界はまだ小さいから致し方ないのかもしれませんね。
そんなみんなに手渡したいのが、今回ご紹介する絵本です。作品名の通り、さまざまな家族について描かれています。家族構成、住居、学校、仕事、休日の過ごし方、食べ物、服装、ペット、お祝い事、趣味、交通手段、家族の気持ちや、家系図など。テーマごとにお話が展開していて、家族で話題にしたことのないようなことも書いてあります。家族の形も暮らし方もいろいろあるけれど、この絵本の中にはどこか「あ!私の家族と一緒だ!」と思えるところが見つかると思います。そして、違いがあることも。最後のページの言葉は、じんわり心に沁みます。だからこそ、家族との今を、大切にしたいと思える言葉。ぜひ読んでみてください。
「うちでは、どうして?」という子どもたちの疑問に、私はうまく答えられなかったけれど…。この作品は、子どもたちが何かに気づくきっかけになる絵本だと思いますよ。
今回ご紹介した本
『いろいろ いろんな かぞくの ほん』
文:メアリ・ホフマン
絵:ロス・アスクィス
訳:杉本 詠美
少年写真新聞社
profile
芳野仁子(よしののりこ)さん
子どもの本とおもちゃの専門店「からすのほんや」店主。雑誌や新聞で絵本や子育てに関するコラムを執筆するほか、子育てに関する講座の講師も務める。
小学生対象のフリースクール「みんなのおうち」、考える力を楽しく養うキッズスクール「ひみつの国語塾」を運営。「一般社団法人 家庭教育研究機構」代表理事。
からすのほんやホームページ
http://karasubook.com/