違い? 共通点??『くらべるえほん たべもの』
書店「からすのほんや」店主・からすちゃんが選ぶ、子どもと、本と(23)
「宿題教えて~」と、夜に中学生からメッセージが届くことがある。以前は漢字や計算などのプリントが主流だったけれど、ここ数年は、とても愉快な宿題に出会えることがある。例えば
「あなたの好きなスポーツを2つ挙げましょう。そのどちらの方が好きか、理由をつけて述べましょう。」
「あなたは、AとBのお菓子のどちらが人気があると思いますか?その理由も述べましょう。」
というふうに、思考力、判断力、表現力を育む現代ならではの宿題。私が子どもの頃もこんな宿題だったら毎日充実していただろうなぁ~とうらやましく思ってしまう。
この作品は、そんな新しい時代の子どもたちが楽しんでくれそうな絵本です。
よく似た食べ物が左右のページに描かれています。例えば、縦に切ったスイカと横に切ったスイカ、えびフライとえびの天ぷら。同じ食べ物だけど、違いのあるもの。よく似ているけれど、違う食べ物。
どの絵もとても繊細に描かれていて、絵を見ているのにまるで触っているような感覚になります。そして、どれもおいしそうです。
子どもたちと一緒に読んでいると、絵をじっくりと観察してこんなことを言います。
「丸いのは一緒。でも〇〇がちがう!」
「同じ果物だけど、ここがちがう!」
「同じ」と「違う」をリズムよく繰り返している子どもたちの姿を見ていると、比べることは「違い」を見つけるだけでなく、何かしらの「共通点」も一緒に感じることなのだと気づかされます。
多様性が尊重される時代。互いの違いを認め合う寛容な社会は、違いと同時に浮き彫りになる共通点を感じることで、より幸福な社会を生み出すのかもしれないなと、いつになく考えさせられた一冊です。
今回ご紹介した本
『くらべるえほん たべもの』
さく・え:ちかつたけお
出版社名:学研プラス
profile
芳野仁子(よしののりこ)さん
子どもの本とおもちゃの専門店「からすのほんや」店主。雑誌や新聞で絵本や子育てに関するコラムを執筆するほか、子育てに関する講座の講師も務める。
小学生対象のフリースクール「みんなのおうち」、考える力を楽しく養うキッズスクール「ひみつの国語塾」を運営。「一般社団法人 家庭教育研究機構」代表理事。
からすのほんやホームページ
http://karasubook.com/