きっとなにか描きたくなる『絵のえほん』

きっとなにか描きたくなる『絵のえほん』

書店「からすのほんや」店主・からすちゃんが選ぶ、子どもと、本と(26)


芸術の秋。美術館で美しい絵画に出会うのが楽しい季節です。
子どもたちは、観るだけでなく描くのも好き。けれど最近は、お部屋が汚れちゃうから、保育園や幼稚園でしか描かないでほしい…とか、「〇〇描いて」とおねだりしてきて困っちゃう、なんていうママたちのお声もいただいています。そういうご家庭に、押し売りのようにお勧めしちゃうのが、この本。だって、読み終えるとなぜか、絵を描きたくなっちゃうのですから。
出来上がった絵が載っているわけではなく、出来上がっていく過程が、順に描かれています。「こうやって描くんだ」と、大人も子どももきっと納得できる、お絵かき初心者向けの指南書のような作り。遠近法や陰影、アングルやトリミングなどさまざまな技法が絵本のように綴られています。
この本を読むといつも、高校の大先輩の陶芸家が、ちょっと落ち込んでいた私にかけてくれた言葉を思い出します。

「光と影はいつも一緒にある。影があっての美しさ。人もそうなんやないと?」

芸術と言われるものは、私たちの日常のくらしと切り離して考えがちだけれど、突き詰めると、実は生きることや人の在り方そのものではないかと教えてくれたひとことでした。
この本には、そんなドキッとさせられる言葉もそっと添えられています。秋の夜長。家族で楽しく、もしくはひとり静かに絵筆をとる時間もまた、あなたの毎日を、より豊かなものにしてくれるのではないでしょうか?

今回ご紹介した本

『絵のえほん』
編:視覚デザイン研究所
視覚デザイン研究所

profile

芳野仁子(よしののりこ)さん

芳野仁子(よしののりこ)さん

子どもの本とおもちゃの専門店「からすのほんや」店主。雑誌や新聞で絵本や子育てに関するコラムを執筆するほか、子育てに関する講座の講師も務める。
小学生対象のフリースクール「みんなのおうち」、考える力を楽しく養うキッズスクール「ひみつの国語塾」を運営。「一般社団法人 家庭教育研究機構」代表理事。
からすのほんやホームページ
http://karasubook.com/

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