たべものにあいたあなのひみつを楽しく紹介『あな あな はてな』

たべものにあいたあなのひみつを楽しく紹介『あな あな はてな』

書店「からすのほんや」店主・からすちゃんが選ぶ、子どもと、本と(32)


食いしん坊の私の本棚には、はらぺこめがねさんの絵本が何冊もあるのですが、中でも好きなのがこの作品。
穴の開いた食べ物が、いくつも紹介されています。最初は「ちくわ」。ちくわの長い穴が、どうやってできていくのかが順に描かれています。次は「ドーナツ」に「パイナップル」と続きます。なぜ穴が開いているのか。穴にはどんな役割があるのか。さまざまな穴とその理由が、それはそれは、おいしそうに描かれています。きっと、食いしん坊の子どもたちにはもってこいの絵本ですよ。

「穴の開いた食べ物」の思い出が、私には、なぜかたくさんあります。例えば、チョココロネのクリームだけを取り出して食べたり、グラタンの中に入っているマカロニのソースを吸い出し、ストローみたいにしてジュースを飲んでみたり、妹と手作りドーナツの穴からお互いをのぞきあって、顔もテーブルも砂糖だらけにしたり。いつも最終的には、祖母に「食べ物で遊ばない!」と叱られていましたが…。なんでそんなことをしたのかは、さっぱりわかりませんが、穴の開いた食べ物に魅了されていた時期がありました。「穴」という形状の不思議さに、心奪われたのかもしれませんね。

この作品を読んでいると、そんな愉快な思い出とともに、家族の顔や、ゆったりとした時間の流れ、やわらかい空気感がよみがえってきて、ふっと笑えます。そして、なんとなく心がリラックスできるのは私だけなのかな?私にとって、この絵本はタイムマシンなのかもしれません。
みなさんも、この絵本を読んでみると、幼い頃のあの瞬間に再会できるかもしれませんよ。

今回ご紹介した本

『あな あな はてな』
作:はらぺこめがね
アリス館

profile

芳野仁子(よしののりこ)さん

芳野仁子(よしののりこ)さん

子どもの本とおもちゃの専門店「からすのほんや」店主。雑誌や新聞で絵本や子育てに関するコラムを執筆するほか、子育てに関する講座の講師も務める。
小学生対象のフリースクール「みんなのおうち」、考える力を楽しく養うキッズスクール「ひみつの国語塾」を運営。「一般社団法人 家庭教育研究機構」代表理事。
からすのほんやホームページ
http://karasubook.com/

こちらもあわせてチェック!