
【子どもとスポーツ⑥】泉原先生教えて!『子どもとスポーツ』Q&A
子どもの運動神経や、コーディネーション運動にまつわるハテナについて、泉原先生にお尋ねしました!
◎コーディネーション運動とは…脳と神経を刺激することで、運動神経をきたえるトレーニングメソッド。
Q. 子どもの運動神経は、都市部で育つか、郊外で育つかによって差が出ますか?
A.
過去、「都市部と非都市部で子どもたちのコーディネーション能力(運動神経)に違いがあるのか?」を探る目的で、福岡市と遠賀郡の小学生(2〜4年生)を対象に比較・分析する研究※を行ったことがあります。すると、リズム感覚は福岡市の子どもたちの方が優れている一方で、方向感覚とグレーディング(力の入れ具合の調節)は遠賀郡の子どもたちの方が優れているという結果が得られました。どちらが良いということではありませんが、習いごとをはじめとする運動環境や生活習慣などの違いにより、「住む場所によって発達傾向に違いが見られる」と言えそうです。
※出典:泉原嘉郎「動画でわかるサッカーコーディネーショントレーニングバイブル13p-14p」(大修館書店/2020年)
Q. 「早生まれの子は、身体能力が劣り運動が苦手になる」と聞き、心配です。生まれた時期と子どもの運動神経には、関係がありますか?
A.
大丈夫です。上記でも触れた比較研究の結果、小学1〜4年生の年代においては、コーディネーション能力(運動神経)の優劣と出生の時期(早い時期に生まれたか、遅い時期に生まれたかどうか)には、関係性が見られないことがわかっています。ぜひ「やってみたい!」と思う運動にたくさん触れ、脳から筋肉に伝わる神経ルートへの刺激を積み重ねましょう。
Q. コーディネーション運動は、中学生や高校生がやっても効果がありますか?
A.
コーディネーション運動は、子どもからシニア世代まで、全世代に効果が見込めるものです。中学生・高校生なら、勉強の合間に集中力を高めるプログラムに取り組んでみるのもおすすめです。
脳を働かせることで、気分の落ち込みやイライラを解消する効果もありますから、大人もチャレンジしてみてくださいね。
Q. コーディネーション運動は、1日のうちどの時間帯に取り入れるのが効果的ですか?
A.
おすすめは朝です。と言っても、昼にやっても夜にやっても効果はありますから、いつでも時間ができるタイミングで構いません。また、いつやるかよりも、続けることが大切です。気づいた時にちょっとやってみよう…というやり方で構いませんので、1日1分でも2分でも、続けて取り組んでみましょう。
今、全国の小学校の校庭から、うんていや登り棒が姿を消しつつあります。さまざまなリスクを考慮しての決断でしょうから仕方のないこととはいえ、子どもたちが遊びの中で運動神経を発達させる機会が減っていくことが、非常にもったいなく、残念に思っています。ぜひ、各ご家庭で、コンピュータゲームとはひと味も二味も違った、リアルなコーディネーション運動を味わい尽くしてみてください!

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泉原 嘉郎(いずはら よしお)さん
九州産業大学健康・スポーツ科学センター准教授。独ライプツィヒ大学でコーディネーション理論をテーマに博士号を取得。日本サッカー協会技術委員会フィジカルフィットネスプロジェクトメンバー。