福岡のフリースクール・不登校支援の現場から【筑紫野市】遊び学び舎 みつばちアジト

福岡のフリースクール・不登校支援の現場から【筑紫野市】遊び学び舎 みつばちアジト


福岡県内のフリースクールなど、不登校の子どもたちの支援を行っている芳野仁子(よしののりこ)さん(愛称“のんちゃん”)が、「多様な学び」を選択する子どもたちの応援をしている、ステキなおとなに出会う「てくてく旅」!。

のんちゃんのてくてく旅 vol.5
今回は、前回お話を聞いたフリースクール山ねこの田中さんからご紹介いただき、「遊び学び舎 みつばちアジト」を運営する、「一般社団法人wonder forest(ワンダーフォレスト)」の中川友佳(なかがわ ゆか)さんに会いに行きました。

親でもなく教師でもなく

子どもたちが作った旗を掲げてパチリ☆スタッフの清水魁偉(しみず かいい)さんと一緒に

のんちゃん: 「遊び学び舎 みつばちアジト」というネーミングが、すごく魅力的ですね。名前の由来は?

中川さん: 日本ミツバチは、百花蜜を集めると言われますよね。命を繋いでこの世界を保っている仲介役というか、そんなミツバチと子どもたちが似ているなと思って。
子どもたちがいろんなところに関わって、そこで刺激し合い、つながりが生まれ、社会は成り立っている。ミツバチのように社会の仲介役になっている子どもたちが育つところという意味で、「みつばち」を名前に入れたいなと思ったんです。それから「アジト」は、「これダメ」「あれダメ」と言ってしまう大人から隠れて、ちょっとだけやんちゃなこともできそうなところ、というイメージから名付けました。

のんちゃん: 「アジト」って聞くと、子どもの頃基地をつくっていたことを、思い出しちゃった!親や教師とは一味違う、ちいさな社会との関わりがここにはありそうですね。

自分の命を生き切るために

わくわくドキドキ! ひみつ基地やあそび場づくり体験の様子

のんちゃん: オルタナティブスクール(公立学校でも私立学校でもない、新しい学びの場、選択肢のこと。)とのことですが、どんなお子さんが通ってこられますか?

中川さん: ほとんどが不登校を経験した子どもたちです。小学生から中学生までいろんな学年の子が来てくれています。始めたのは6年前。ちょうどコロナ禍でした。自分の感覚と社会の間のずれとか、子どもたちが置いて行かれているようなところを感じていて、分からないことだらけでしたが、周りからの「たいへんな時だからこそ、やりなよ!」という励ましもあり、「今こそやっちゃえ!」みたいな感じで始めました。

のんちゃん: 子どもたちを支援する活動を始めたきっかけは?

中川さん: 熊本地震の災害ボランティアに参加したとき、都会と農家さんの多い地域との違いに大きな衝撃を受けたのがきっかけです。市街地ではライフラインが絶たれると何もできないって感じで配給に並んでいる人が多い中、郊外の農家さんの多い地域では、米や野菜があり、湧水を活用するなど、避難所にじっとすることなく、隣近所のつながりの中で、協力し合いながら乗りこえていかれていました。
未来を担う子どもたちにも、その力と環境があれば、自分の命を生き切ることにつながって、社会はもっと良くなるんじゃないか、それが遠回りのようで近道なんじゃないかと考えるようになったんです。

のんちゃん: 東日本大震災の時、おじいさんやおばあさんの「生きる力」生きることへの逞しさを、私も感じました。人生観とか価値観を、ひっくり返されるような衝撃と、深く深く本質に向かうような時間。私にもありました。

「チャレンジ」までのステップアップ

のんちゃん: 中川さんは3人のお子さんのお母さんでもいらっしゃるんですよね。

中川さん: はい。私自身、子どもたちを育てていて感じるのは、やっぱり親との関わりが表に出てくるということ。例えば何か問題が起きたとき、原因は子どもではなく、親にあるのではないか。子どもたちがそう気付かせてくれるんです。だからこそ、親御さんたちにもお子さんとのコミュニケーションを大切にしてほしいなって思います。

窓から見える緑が心地よく、ゆっくりと呼吸するように、各々の時間を大切に過ごしているようでした

のんちゃん: 子どもたちとの向き合い方で大切にしていることはありますか?

中川さん: スクールに通い始めたばかりの子どもたちの中には、心がちょっと疲弊してしまっている子もいます。そんな時は、「自分はそのままでいいんだ」っていう「余白」をつくるようにしています。自分を好きになっていいんだって。それには、自分の好きなことを知り、それをやってみることが大切です。
この小さな積み重ねによって自信や自尊心が育っていく。教科学習や進学について考えるようになるまでにはステップが必要です。「余白」が生まれてこそ、ようやく、チャレンジする力が湧いてくると思います。

自分を取り戻す

保護者の方も参加してイベントを開催することも

のんちゃん: これって、子どもだけじゃないですよね。大人も同じかもしれませんね。表面的な目に見えやすいところで子どもの成長を見ている気もして、本質的なところを見る余白を、大人が持ちにくくなっていることを考えると、保護者の方との関わりは、本当に大切になりますね。

中川さん: 大人も含め、皆さんが持ちにくくなっている、最初の「余白」づくり。ここに通う子どもたちは「あそび」を通じてその「余白」が形成されていきます。なので、私たちはこの「あそび」をとても大切にしています。
大人同士で話していても、対話ではなく「対立」みたいになったりすることってありませんか? 分かり合えないっていうか。お互いの価値観を認め合えなかったり、すれ違ったりする。自分への自信や自尊心といった「余白」を持ち合わせていないと、すぐに「攻撃だ!」みたいになってしまいがち。子どもを取り巻く環境に変化を起こすには、大人たちが「余白」がなくなっていることに気付く必要があるのではないかと思います。

森の中で行われる卒業式

のんちゃん: 表面的な目に見えやすいところだけで子どもの成長を見て、本質的なところを見る「余白」を大人が持ちにくくなっているのかもしれませんね。

中川さん: ですから、大人自身が自分を生きること、自分がやりたいことをやれるっていう環境がとっても大事。自分が我慢していること、大人だから、親だから、世間体がとかいろいろあって我慢していることを「やってみたい!」と思うこと。小さなことでいいんです。「今日、ケーキ食べたいな」って思ったら、ケーキを食べてみるとか。ささやかなことでいいから、自分の中から湧き上がってきたことをやるってことを続けていくと、変わってくるのかなぁって。そして、大らかな、寛容な大人が増えていくことで、子どもたちは勝手にのびのびと育っていくのかなって思います。

卒業式では1年間で学んだことの発表会も

中川さん: 大人も子どもも、誰かにもらった価値観みたいなものを剝ぎ取って、「自分」を見つけてほしい。「自分を取り戻す」って私は言っているんですけれど、取り戻した人は強いんです。心配ご無用ですよ。


教員免許も持っている友佳さんは、ワーキングホリデーの海外での経験などをきっかけに、この世の中が幸せに満ちた世界になるために、今私たちは何をなすべきか、どうあるべきか、深く深く考えられたのだと思います。子どもたちの育ちや学びの根源が、大切にされている場所で、ゆったりと静かに語らった時間は、私にとっての宝物になりました。

次回は…
友佳さんからご紹介いただいた、久留米市にある「フリースクール未来学舎」代表理事中島靖博さんを訪ねます。「良い意味で変態って感じかな?他の学びの場とは違う、突き抜けた感じがして、大好きな場所です!」と友佳さん。次回もお楽しみに!

団体紹介

施設情報

一般社団法人wonder forest

一般社団法人wonder forest

遊び学び舎 みつばちアジト
住所:〒818-0046 福岡県筑紫野市山口843
●公式ホームページ
https://mitsubachiajito.wixsite.com/home

のんちゃんプロフィール

profile

のんちゃん こと 芳野仁子(よしののりこ)さん

のんちゃん こと 芳野仁子(よしののりこ)さん

嘉麻市生まれ。「一般社団法人 家庭教育研究機構」代表理事。小中学生対象のフリースクール「みんなのおうち」を運営する傍ら、福岡県内各地のフリースクールを訪ね、支援する活動にとりくむ。

一般社団法人 家庭教育研究機構ホームページ
https://r.goope.jp/minnnanoouchi/