おさよさんの「苦手な家事を楽しむために」第1話
収納に、掃除に、料理に。その手に掛かれば、どんなことも素敵なライフスタイルの1コマに変えてしまう、おさよさん。
インスタグラムのフォロワーは32万人以上、テレビのレギュラー番組ではアイデア満載の収納術を発揮し、家事に関する本を出せばあっという間に話題に。2児の母として子育てをしながらのその生活ぶりは、今や同世代の女性の憧れの的です。
そんなおさよさんですが、以前は思うように家事をこなせず、子育てをしながら悩む日々が続いていたそうです。
では一体、おさよさんはどのように“苦手”を克服し、これほどたくさんのファンを持つ家事のスペシャリストになったのでしょう。2話にわたるインタビューです。
自分は、悩み多きごくごく普通の“お母さん”
白を基調にした、清潔感あふれるおさよさんの自宅は、どこをとってもまるでインテリア雑誌のよう。すべてが“一糸乱れぬ”という感じで、美しく整えられた空間です。
おさよさん:
「出演しているテレビ番組を観てくださった方から『クールでテキパキしている人』と思われたり、新聞記事に『家事を愛してやまないスーパー主婦』と書かれたりしたこともあります。でも、実際の私はクールでもなければスーパー主婦でもありません。子育てで頭を痛めたり、家事がうまくいかなくて落ち込んだりを長い間繰り返した、ごくごく普通のお母さんです」
家のことがうまくできずに悩んだ日々
収納や整理などのスペシャリストとしてインスタでも大人気のおさよさん。でも、かつては家事が苦手で長い間そのことに苦しめられていたそうです。
おさよさん:
「結婚してから、私は家のことがなかなか上手にできませんでした。もともと掃除も洗濯も料理も片付けも、決して嫌いではないのですが、のんびりした性格なこともあって、すべてに時間がかかるんです。
結婚後はそれでかなり悩みましたね。自分が家の中を管理しようとすると、限られた時間の中ですべての家事を要領よくまわしていかなければなりません。でも、どうしても思うようにいかない。
仕事と家事の両立だけでもそうでしたが、子どもが生まれて育児が加わると、自分の“できなさ加減”で自己嫌悪に陥ることがさらに多くなりました」
完璧な母親の影響で、さらに落ち込むことも
おさよさん:
「多分、母の影響も大きかったと思います。私の母は、自分を犠牲にしてでも家のことを完璧にこなすタイプ。そういう環境で育っているので、ついつい母の姿を自分に重ねて、『主婦なら、母なら、きちんとやって当たり前』という気持ちが強くなりすぎて、プレッシャーになってしまってしんどかったです。
当時は、夫も家のことはほとんど私に任せっきり。そんなこんなで、長男の子育て真っ最中に、心身ともに疲れ果てて体調を崩した時期もあります」
息子から掛けられた言葉が大きな転機に
そんなおさよさんに転機が訪れたのは、今年で9歳になる長男がおさよさんに掛けてくれた言葉でした。
おさよさん:
「公園で一緒に遊んでいた息子が私に『ママ大好き』『ママかわいい』って言ってくれたことがありました。ちょうど言葉を覚え始めた頃で、私が息子によく掛けていた言葉をそのままマネしたんでしょうね。
真っ直ぐな子どもの言葉にハッとしました。私は、自分のことをダメな母親だとばかり思ってきたけれど、この子にとって私はただ一人の大好きなお母さん。この子を守るだけではない、この子と幸せに暮らす覚悟のような勇気が湧いてきました。『苦手なことも、私なりに楽しんでみようか』と。
その時から、まるで家が丸ごと実験室のように思えて。ああでもない、こうでもないと、工夫することに心の豊かさを感じるようになりました。
今は、できない自分を責めるのではなく、できていることに目を向けていこうと思っています」
ものと収納から見えてきたこと
同じ頃、おさよさんは家事がうまくできない原因にも気がつきました。
おさよさん:
「家事をうまくできなかった原因のひとつは、片付けがうまくできていなかったことでした。私はものを買うのが好きで、家事の道具や育児グッズなど、かつては家の中がものでいっぱいだったんです。ものって、その人の思いとか願望がこもってるところがあるんですよね。
例えば、息子が全然興味を示さなかった歩行器や赤ちゃん用の椅子。親としては『この子の成長のため』という思いがあり、全く使ってないのにスペースを占領していました。
それから洗剤。『ちゃんと掃除したい!きれいにしなくちゃ』ってすごく思っていたんでしょうね。何種類もありました。そんなになくても、掃除はできるんですけど(笑)。
収納も、とにかく多くのものを詰め込んだ者勝ち!って感じで。スーパーの詰め放題特売かのごとく、ちょっとの隙間も逃さずに、あの手この手で持っているものを全部詰めようとしていました。使いづらいったらなかったです。ものが多ければ多いほど、それらに圧迫されて、ストレスが増えてしまっていた気がします」
心まで軽くしてくれた「整理整頓」
おさよさん:
「その後、一つひとつのものを見直していく中で、私の悪い癖で“こうでなければいけない”と決めつけて、自分をいじめていた呪いのようなものを手放していきました。
そうして、手元に残したものに対しては、いつも良好な関係で居られるように、部屋を作ってあげるような気持ちで収めていったんです。
ものを減らすという一連の作業は、私の心まで軽くしてくれました。ものを取捨選択していくことは、自分の価値観にじっくり向き合っているような感覚。本当に大切にしたい時間を手に入れていきました。
もし、私と同じように悩んでいる方がいらっしゃるなら、試しに自分のお財布や引き出しなど小さい範囲から整理してみてはどうでしょう。1カ所きれいにすると、その気持ち良さは他の場所へも伝わって気づけば部屋中がスッキリしますし、使いやすくなるので本当にオススメです」
長い間縛られていた「こうでなくちゃいけない」という思いから解き放たれ、いい意味であきらめる術を身につけたおさよさん。それから、ご自身にとって家事は苦手でも楽しめる日常の営みとなりました。2話では、そんなおさよさんが考える“苦手な家事とどう向き合うか”についてご紹介します。
profile
おさよさん
整理収納アドバイザー、整理収納教育士、掃除技能検定士、片づけ遊び指導士認定講師。
9歳の長男、6歳の長女の母。数年前に投稿を始めた整理や収納、掃除などの独自の方法を紹介したインスタグラムが話題に。テレビや雑誌などでも活躍している。
近著は『スッキリ公式本 収納のおさよさんが教えるキレイが続く片づけ』(セブン&アイ出版)、『おさよさん流 がんばらなくてもキレイが続く家事の工夫』(SBクリエイティブ株式会社)。福岡県在住。エフコープ組合員歴9年。
・Instagram:osayosan34
https://www.instagram.com/osayosan34/?hl=ja