しあわせに気づく、力をつける 1話:普段のくらしの中に詰まっている、しあわせの種
家事のこと、食のこと、仕事のこと。
生活コラムニスト・ももせいづみさんは、常に忙しい女性に寄り添い、背中を押してくれたり、肩の力を抜くことを教えてくれたりする、良きアドバイザー的存在です。
「しあわせは手に入れたり与えられたりするものではなく、気付くこと」と語るももせさんの、日々の“しあわせ”の感じ方について、3回シリーズでご紹介します。
取材場所:Cafe Causa
できないことを嘆かず、できたことを喜ぶ
日々、終わりのない家事や育児。やるべきことは山積みなのに、あれもこれもできない。1日の終わりに、「これでいいのか」と自問する毎日。家庭を持つ女性が抱える思いに、ももせさんは開口一番、こう語りました。
ももせさん:
「『何もできなかった』と思ってしまう日でも、実はすごくたくさんのことができているんですよね。時間通りに起きた、顔を洗って化粧をした。それだけでも実はすごいこと。さらに掃除も洗濯もしてごはんも作ってる。十分えらいんですよ。出来栄えに関係なく、今日できて、明日もできると思えることはすべて褒められること。一日の終りには、できなかったことではなく、できたことを数えて、自分を褒めてあげてほしいんです。それだけで一日の見え方は変わってくると思います」
余裕のない毎日にも、しあわせは散りばめられている
シングルマザーとして、一人息子を育ててきたももせさん。もちろん、育児中はなかなか気持ちに余裕が持てないことはご自身も経験済みです。
ももせさん:
「私もそうでしたが、子どもを持つ母親は、耳に入る子育て情報に否が応でも敏感にならざるを得ません。例えば、『英語は3歳までに習わせるべき』『頭のいい子に育てるには夜9時に寝かせる』。そんな情報をどんどんコレクションして理想の母親像をつくり上げ、それにとらわれてしまうケースも少なくないのでは」
子育て中にしか経験できない、ハッピーなこと
ももせさん:
「子育てはある意味、毎日が闘い(笑)。でもね、それ、ある日突然終わっちゃうんですよ。わが家も先日、息子が独立して家を出て、『あ、終わっちゃったんだ』って。渦中は大変なことも多かったけれど、振り返るともっとたくさん楽しんで、喜んでおけばよかったって、本当に思う。だから子育ての中のハッピーをいっぱい探してほしいです」
ネガティブなことに気持ちをフォーカスするのではなく、楽しいことやうれしかったことに喜びを感じる。それが、ももせさんが考えるしあわせへの気付き、というわけです。
嫌なことはできる限り、手放していい
ももせさん:
「もう一つ、私が伝えたいのは、“嫌なことはできるだけ手放す”ことです。暮らしの中で、本当はやりたくないけど仕方なくやっていることもあると思うんです。“体裁を気にして”とか、“お付き合いで仕方なく”とか。でも、これは無理してやらなくていいと思ったら、手放す勇気も大事じゃないかな、と。私も思い切りよくやめてみたら、驚くほど楽になったこと、多かったです」
嫌なことを手放してしまうにはそれなりの勇気が必要ですし、もっと言えば罪悪感のようなものすら感じてしまいがちですが…。
真面目で、ついつい頑張りすぎる、日本人
ももせさん:
「そこに罪悪感を感じるのは、“自分を甘やかしている”と感じるせいかもしれませんね。でも、私は『自分を大切にしているからこそ』だと思うんです。
真面目に頑張るのは、よくも悪くも日本人ならではのメンタリティ。
余談ですが海外では、お弁当がパンとプチトマトだけとか、マカロニサラダだけ、なんてこともよくあります。でも、日本ではなかなかあり得ないでしょうし、『家庭に何か問題があるのでは』と幼稚園から連絡が入るという話も聞きます。
日本人には、見えない“規範”のようなものがたくさんあって、私たちはそこに縛られて、つい頑張りすぎてしまっているような気がします」
辛い時は、時間の力と自分を信じて、じっと待つ
とはいえ、生きていると苦しいことや悲しいことにぶつかることも多いわけで…。そんな時は、どんなふうにして辛い自分を乗り越えればいいのでしょう?
ももせさん:
「なんとか乗り越えないと、と解決策を考えて努力したこともあったんですが、ある日『どうにもならない時は何をしても仕方ない』と思うようになって。それからは、そういう時はひたすら『アルマジロになろう』と丸まって時が過ぎるのを待つようになりました。
人生いろいろな時があるけれど、夜の次は朝が来る。本当にそうなんです。待ってる間にふと、笑顔が増えて何かが変わっていたりする。あせらずじっくり。時間の力と自分を信じていれば、大丈夫。そう思います」
第2話では、ももせさんがおすすめする「しあわせの見つけ方」についてのユニークな実践法をご紹介します。
profile
ももせいづみさん
コラムニスト。くらしやライフスタイルをテーマに、雑誌やテレビ、ラジオ、講演などあらゆるジャンルで活躍中。生活を楽しむためのさまざまな提案が、男女を問わず多くの支持を集めている。『働くお母さん お助けバイブル』(主婦の友社)『季節のある暮らしを楽しむ本』(だいわ文庫)など著書多数。