料理家・広沢さんの、気負わない食育 第3話

料理家・広沢さんの、気負わない食育 第3話

福岡で活躍するフードコーディネーター・広沢京子さんに、食を通じて子どもとどのように接しているか、1話2話でいろいろなお話をお聞きしました。
ではあらためて、食育という視点から、広沢さんは家庭での日々の食卓にどんなこだわりを持っているのでしょう。

だしの味は大切に。水出しの昆布だしなら手間も掛からずお手軽


毎日の食事の基本となるだしは必ずとるという広沢さん。家庭でとるだしの味によって、子どもはわが家の味を少しずつ覚えていくのかもしれません。

広沢さん:
「だしをとっている時の昆布やかつおの香りが好きだし、だしをとる時間そのものも好きなんです。バタバタしている日々の中での、ふっと落ち着けるひとときというか…。

だしをとるって面倒だと思いがちですよね。でも、昆布だしは水でもとれるんですよ。ほら、こんなふうにガラスのポットにだし昆布と水を入れて一晩置いておくだけ。わが家のみそ汁にも、この水出しのだしをよく使います」

みそ汁は、体のお薬。だから毎日欠かさずに


広沢さんが、水出しの昆布だしを使って、普段と同じレシピでみそ汁を作ってくださいました。具材は春を感じさせる新玉ねぎと菜の花。上品で、しみじみ深い味わいです。

広沢さん:
「私はどちらかというと、みそ汁はシンプルに作る方なので、具材はせいぜい2〜3種類ぐらいかな。だしをとった後の昆布も刻んで加えてもおいしいですよ。

みそのおいしさを余すところなく味わうために、私はみそ漉しを使わずに、直接鍋の中に溶き入れます。そうそう、みそ汁の味が決まらなかったら、しょうゆを少し加えてみてください。コクが出ておいしくなります。

息子には、『みそ汁は体のお薬なんだよ』といつも伝えています。毎日の食卓に欠かせないものです」

意外に早くて、何よりおいしい、鋳物ホーロー鍋で炊くご飯


広沢家では、ご飯は鋳物ホーロー鍋で炊いています。

広沢さん:
「まずお米を研ぎ、たっぷりのお水に浸けます。水に浸ける時間は、夏は15分、冬は30分ぐらいで大丈夫。一旦ざるに上げて10分置いてから炊き始めます。

お米と、同量の水を加えて強火にかけ、沸騰したら弱火で11分。火を止めて10分蒸らせば完成です。

鍋でご飯を炊くというと、ちょっとハードルが高そうに思えるかもしれませんが、結構早く炊けるし、すごくおいしいし、いいことづくめなんですよ。

朝の忙しい時やお弁当用のご飯を炊く時は、炊飯器でタイマーを使った方が便利だと思いますが、晩ご飯の時にはぜひ試してみてほしいですね」

鍋の蓋を取った途端、炊きたてのご飯のかぐわしい香りがふわりと立ちのぼりました。ふっくらと炊き上がったお米は、1粒1粒がピカピカ輝いています。

特別な料理より、普段の食事が大切


広沢さん:
「子どもができるだけ正しい味覚を身につけるには、特別な料理でなく、普段の食事がとても大切だと思うんです。少しでも安全で安心なもの、親が心からおいしいと思うものを子どもに食べさせることで、子どもはその味を体と心で覚えていくのではないでしょうか」

味覚を育てるのは、日々の食事。毎日、口にするお米やだしのおいしさこそ、子どもの心や体をつくり、健康へと導いてくれる。それこそ、食育の原点のような気がします。

母親が幸せな気分で作る料理のおいしさは、きっと子どもに伝わる

お父さんの真似をしてお寿司をにぎる楓くん。

広沢さん:
「夫も私も食べることが大好きだし、私の仕事柄もあって、わが家は食べ物について話すことが多いかもしれません。

お正月には夫がブリを買って寿司をにぎるのが恒例なんですが、息子もいつから『ぼくもやりたい!』と言い出し、見様見真似で握りました。もちろん、お客様には出せる出来ではないですけどね(笑)」

子どもは、大人が楽しんでやっていることをそばで見ていて、そこに関心を寄せるもの。大人の“楽しい”は、子どもの“楽しい”につながっていく−−−−−。

広沢さん:
「だから、母親がニコニコしながら作った料理なら、それを食べた子どもにも母のハッピーな思いが伝わって、子どももきっと幸せな気持ちになれる。おいしさというのは、そんなところにもあるような気がします」

家族で楽しく食卓を囲んで、話をする。それが一番


広沢さんの子どもとの接し方は、親として上から教えるのではなく、子どもと同じ目線で、食についてのあらゆるモノやコトを、子どもが楽しめるようなかたちで伝えたり、話し合ったり、体感させたり。

その過程の中で、子どもは、家族との何気ない日常の中で自然に、能動的に、食の大切さや命の尊さを学んで身につける…。広沢さんの、ごく自然な食育のかたちなのかもしれません。

広沢さん:
「ごちそうを食べるとか、選りすぐりの食材を使うとか、そういうことではなく、家族で楽しく食卓を囲むこと。一緒に食事をしながらいろいろな話をすること。それが一番なのではないでしょうか」

profile

広沢京子(ひろさわきょうこ)さん

広沢京子(ひろさわきょうこ)さん

料理家。千葉県出身。フードスタイリストのアシスタントを経て独立。2009年より活動の拠点を福岡へ移し、レシピ制作、スタイリング、イベント、飲食店のプロデュースなどを幅広く手がける。生産者と家庭の食卓をつなぐ活動に力を入れている。著書に『家だから、いっぱい野菜』(幻冬舎)、『こうかん、ぶつぶつ』(millebooks)など。