「運動ができる子ども」を育てるには? 第3話

「運動ができる子ども」を育てるには? 第3話

最近の子どもは、なぜ運動能力が落ちているのか。運動ができる子どもを育てるにはどうすればいいのか。メンタルトレーニングコーチとして子どもの身体能力の向上を精神面からサポートしてきた金屋佑一郎(かなやゆういちろう)さんに伺ったお話は、第1話第2話ともにとても興味深い内容でした。
今回は、子どもの体の土台づくりのために、室内でも手軽にできる金屋さんおすすめの運動やストレッチをご紹介します。ぜひ、親子で楽しんでみてください!

自分の体重を使った、3通りの運動を


実際の運動の方法を教えていただく前に、運動の際のコツについて金屋さんにお聞きしました。

金屋さん:
「プレゴールデンエイジ(5歳〜8歳)を中心とした子どもが行う運動に、器具を使う必要はありません。縄跳びや倒立、けんすい、腹筋など、自分の体重をコントロールできるようにするための運動を心がけてください。
ちなみに、日常的に意識して行いたい動きには、大きく3パターンがあります。
立つ、寝る、回る、転がるなど『姿勢を保つ運動』。歩く、走る、跳ぶ、這うなど『移動する運動』。そして打つ、蹴る、投げる、受け取るなど『操作する運動』です。日頃からこの3パターンをバランスよくこなすようにしましょう」

姿勢の悪さによる骨盤の後傾に注意!

最近の子どもの典型的な悪い姿勢。

まずは、みなさんもよくご存じの定番のストレッチをご紹介します。ストレッチといえば、運動を行う前の準備と捉えている方が多いと思いますが、子どもたちの体づくりにも最適。ぜひ習慣づけてほしいものです。
ただ、手軽にできるとはいえ、本来の効果が発揮されない方法で行っている場合も少なくありません。その点を踏まえて、今回は正しいストレッチの方法をしっかり覚えてください。どれもテレビを観ながら、家族でおしゃべりをしながらできる「ながらストレッチ」です。


金屋さん:
「両足を広げて上体を倒す運動から行いますが、その前に注意点を。最近はゲームやスマホなどの影響で前かがみになることが多いため、猫背で肩が前に出ている、姿勢の悪い子どもが目立ちますね。写真右を見るとわかると思いますが、姿勢が悪いまま座ると、骨盤が後ろに傾いた状態になります。この状態でどれだけストレッチをしても、太ももの裏側や股関節などにアプローチできないため、本来の効果を得ることができません」


金屋さん:
「骨盤を立てて座るのは、身体が硬いとなかなか難しいもの。そんなときは、お尻に半分に折った座布団や枕など、少し高さのあるものを半分お尻に敷いて(挟むようにして)座ると骨盤を立てやすくなります。
ストレッチは、両脚を開いて両手でつま先に触れるよう、呼吸をしながら10〜15秒間ずつ上体を左右に傾けます」

スクワットは、膝がつま先より前に出ないこと

(写真左)お尻を後ろに突き出し、ひざがつま先より前に出ないようにするのが大切です。
脚のつけ根に置いた手をはさむように曲げましょう。

金屋さん:
「次はスクワットですが、気をつけたいのは、足を曲げた際に両ひざがつま先より前に出さないこと。背後の椅子に座るようなつもりでお尻を後ろに突き出しながら、左右の手を脚のつけ根に置いて、しっかりはさむようにしして両脚を曲げます。ノートなどを間にはさんで行ってもいいでしょう。
スクワットは骨盤の可動域を形成する効果があるため、プレゴールデンエイジの子どもたちにもおすすめです」

バランス感覚を養うための運動


次に、プレゴールデンエイジの子どもたちにおすすめの2種類の運動を教えていただきました。

金屋さん:
「1つ目は、バランス感覚を養う運動。基本の動きは、両手を肩の高さに広げた片脚立ちです。できるだけ長時間、同じ姿勢をキープできるよう練習を。家族みんなで『誰が一番長くできるか』と競争すると飽きずにできますよ」


金屋さん:
「応用編として、片足を上げたまま両手で交互にボールをキャッチする運動もおすすめです。
これらの動きは、崩れそうになったバランスを元に戻す力をつけるために有効な運動。バランス感覚を鍛えておくと、どんなスポーツをしていても、バランスを失いそうになった時、元に戻そうとする力がしっかり働くようになります。親が肩を『ポン!』と軽く押して、わざとバランスを崩させようとするのを耐えるのも、同様の効果が得られますよ」

空間認知の能力を養う運動

前で構えたボールを右手に持って、身体の後ろ側で、左手に渡す。それをまた前で右手に渡します。


金屋さん:
「2つめは、空間を認知する能力を身につけるための運動です。目の前、頭の上、お腹や膝の周りなど、体のあちこちで、両手を使ってボールを回します。
最初はボールの動きが目に見える場所(胸や腰の高さなど)で行い、慣れてきたらボールが目線から外れた場所(頭の上や足元など)で行ってください。次第に、目に見えないボールをキャッチできる空間認知能力が身につけられるようになります」

肩甲骨を思いっきり動かす運動


金屋さん:
「最後に、大人も子どももぜひやってみてほしい、肩甲骨を動かす運動をご紹介しましょう。
最近は、日常生活の中で肩甲骨を使う動作が少なくなっているため、大人はもちろん、子どもも肩甲骨の可動域が狭くなっているんです。肩甲骨を動かすことで運動中のケガも防げ、ボールを投げたりキャッチしたりという上半身の動きがスムーズにできるようになります。大人なら肩こり予防にもおすすめですよ。

まず、手のひらを内側に向けて万歳を。そこから、手のひらが外側を向くように両手をひねりながら手のひらを肩の高さまで下げていきます。左右の肩甲骨を背中の中央にぎゅっと寄せる意識で数回、行いましょう」

平泳ぎの動作も、肩甲骨のいい運動に


金屋さん:
「肩甲骨を動かすために、もうひとつ実践していただきたい運動が、これ。両手に1個ずつボールを持ち、うつ伏せになって上体を反らしながら平泳ぎの動きを行います。この時、床にボールがギリギリつかないように気をつけながら手を動かすのがコツです。脚を動かす必要はありません。ボールを持つことで、子どもたちにもゲーム感覚で楽しんでもらえると思いますよ」

いかがでしたか? 今回教えていただいた運動はどれも簡単で、手軽にできるものばかり。すぐにでも始められそうですね。
子どもの運動能力を伸ばすことは、健康な心身を育むことにもつながります。新年度から、何か子どもに始めさせようと思っている方は、ぜひ運動を楽しめる体作りにチャレンジしてみてくださいね!

profile

金屋佑一郎(かなやゆういちろう)さん

金屋佑一郎(かなやゆういちろう)さん

元・読売巨人軍ジャイアンツアカデミーコーチ。大学でスポーツメンタルトレーニングを学び、その後「読売巨人軍ジャイアンツアカデミー」で、コーチとして少年野球の技術指導やメンタル面のサポートを行う。現在も、講演会などでスポーツの指導者や保護者に向けたメンタルトレーニングのノウハウを指導。2児の父。