「運動ができる子ども」を育てるには? 第2話

「運動ができる子ども」を育てるには? 第2話

さまざまな環境の変化などによって、身体を動かす機会が減っている最近の子どもたち。その運動能力の衰えは確かに深刻ですが、ではどうすれば、運動のスキルを高めることができるのでしょうか。その鍵は前回ご紹介した通り、後の運動のスキルに大きな影響を与える“ゴールデンエイジ”や“プレゴールデンエイジ”と呼ばれる5~12歳の頃に、いかに体を動かすかがポイントとなります。
そこで今回も、メンタルトレーニングコーチとして多くの子どもの運動サポートを行ってきた金屋佑一郎(かなやゆういちろう)さんに、運動ができる子どもを育てるために、プレゴールデンエイジの子どもたちに対して親が日頃から心がけたいあれこれについてお聞きします。

★第1話はこちらから。

身体を使って思いっきり遊ばせる


まず、プレゴールデンエイジ(5~8歳)の子どもには、できる限り身体を使った遊びをさせることが大切なのだそうです。

金屋さん:
「よくできたもので、鬼ごっこやかくれんぼ、ケンケンパなど、昔の外遊びには、走ったりバランスを取ったり、子どもの身体能力を伸ばす運動がたっぷり含まれていました。
ですから、環境が許せば外で思いっきりそういった遊びをやらせるのが一番ですが、難しければ屋内でも構いません。ボール投げでも体操でもなんでも大丈夫。要は身体をできるだけ使って遊ばせてほしいのです。

その際は、親が一方的にやらせるのではなく、できるだけ親子で一緒にコミュニケーションをとって遊ぶようにしてください。
このくらいの年齢の子どもは集中力がなく、飽きやすいのも特徴です。1つのことを延々とやるのではなく、数分程度で遊びの内容を変えるようにしましょう。子どもの方が『もうちょっとやりたい!』というぐらいで切り上げるのがコツです」

怒るのではなく、ほめて能力を伸ばす


そして、子どもの能力を伸ばすには、年齢にかかわらず怒るよりほめてほしいというのも金屋さんの持論です。

金屋さん:
「スポーツの現場などでよく耳にするのが、親や指導者の『どうしてできないんだ!』『もっとやれるだろう!』などと子どもを叱る声。日本人は昔から、ほめるより怒って子どもの能力を伸ばそうとする傾向にあります。でも、そんなふうに言われてしまうと、特にメンタルの弱い最近の子どもは萎縮してしまって、その時点で運動が嫌いになってしまうことも少なくありません。
これは運動の現場に限らずですが、できないことを叱るのではなく、できたことを徹底的にほめる。そうやって子どもの能力を伸ばしてほしいと思います。
親子のコミュニケーションスキルで大切なのは、『認める』『ほめる』『肯定する』『賛同する』こと。“み・ほ・こ・さん”と覚えておくといいですよ」

能力ではなく、努力をほめる


金屋さんいわく、「ほめる」とひと言で言っても、ほめ方にもコツがあるのだとか。

金屋さん:
「子どもをほめる時は、その子の能力ではなく、『よく練習したね』『頑張ったね』というふうに、努力をほめてあげてください。例えば、『○○ちゃんは天才だね』などと子どもの“能力”を讃えていると、結果が思うようにでなくなると子どもは『自分には能力がない』と感じてあきらめてしまうことにつながります。

能力といえばもう一つ、他の子と自分の子の能力を比べるのもNGです。他の子がうまく鉄棒ができたから、わが子ができないのはおかしい。そんなふうに思いがちな親の気持ちもわかりますが、子どもにはそれぞれ成長の個人差があるわけです。一番良くないのは、親が無理やりさせること。子どもが運動嫌いになる大きな要因です。たとえその時に鉄棒がうまくできなくても、その子に意欲があれば何の問題もありませんから」

子どもの4つのやる気スイッチ


さてここで、金屋さんから、子どもに積極的に運動をさせるために親が心がけたい“やる気スイッチ”を入れる方法について教えていただきました!「以下の4つを意識的にやってあげることで、子どももぐんぐん運動に対するやる気が湧いてくると思います!」とのこと。ぜひ意識してみてください。

<やる気スイッチ>
1.動画でスポーツ選手の試合中のシーンなどを見せて『やってごらん』と真似をさせる。成功をイメージさせる訓練です。

2.親子で遊ぶ時はあえて競争をし、子どもがやる気を見せて勝つように持っていく。とはいえ、時には親が勝って(本気を出して)、子どもに悔しい思いをさせることも必要です。

3.運動に対する目標は高く設定せず、『ちょっと頑張ればできる』程度に。いまの実力を100%としたら、110%ぐらいの目標を持たせるように。目標が高すぎるとなかなかそこに到達できず、モチベーションが下がってしまいます。

4.子どもが、自分がやっていることを親に『見て見て』と言ったら、家事の手を休めて真剣に見る。もちろん褒めてあげることも忘れないでください。

親の日頃の言葉遣いが子どもに影響する


金屋さん:
「親の言葉遣いはとても大切です。子どもたちと接していると、運動が伸びる子は『もっとやろうぜ!』『よくできた!』『次行こう!』など、前向きな言葉遣いが多いことに気づきます。反対に、なかなか伸びない子は『嫌だ』『最悪』『面白くない』など、知らず知らずのうちにネガティブワードを使っています。これは明らかに親の影響で、日頃から親が使っている言葉を子どもも無意識に身につけてしまうのです。ですから、親御さんはできるだけポジティブな言葉を使うように心掛けてください」

自身も、4歳と0歳の2人の女の子を持つ金屋さん。今回ご紹介していただいた内容はもちろん、ご自身も家庭で普段から実践していることだそうです。3話目では、家の中で、親子で手軽にできる運動をご紹介します。

profile

金屋佑一郎(かなやゆういちろう)さん

金屋佑一郎(かなやゆういちろう)さん

元・読売巨人軍ジャイアンツアカデミーコーチ。大学でスポーツメンタルトレーニングを学び、その後「読売巨人軍ジャイアンツアカデミー」で、コーチとして少年野球の技術指導やメンタル面のサポートを行う。現在も、講演会などでスポーツの指導者や保護者に向けたメンタルトレーニングのノウハウを指導。2児の父。