絵本の力を感じるおすすめの一冊『4さいのこどもって、なにがすき?』
書店「からすのほんや」店主・からすちゃんが選ぶ、子どもと、本と⑫
もうすぐ夏休みがやってきますね。私の幼い頃の夏休みの思い出と言えば、「セミの抜け殻あつめ」。毎朝のラジオ体操の前に、大きなビニール袋を持って出かけていました。日々集めた、大きさや形のちがうセミの抜け殻のコレクションは大量で、今の私が見たらきっと気絶するに違いありません。
あるとき、そのコレクションを祖父に見せたことがありました。祖父は「いっぱい集めたなぁ」「飾ってみるかぁ」と、障子の桟に種類ごとに引っ掛けながらふたりで並べました。数時間後、祖父とわたしは、ござの上に足を投げ出して座り、扇風機の風に吹かれながら、並べ終わったコレクションを眺め、ちょっとした達成感のようなものを感じつつ、ふふふと笑い合いました。
そんなことを思い出させてくれる、この作品は、「4さいのこどもって、なにがすき?」という質問から始まるおはなし。あるおばさんの家に4人の子どもたちがやってきます。全員4歳。おばさんは子どもたちにチョコレートケーキや手作りクッキー、レモネードなどをふるまいます。子どもたちは、それぞれに好きなものや好きなことをおばさんに伝えます。「ジャングルジムが好き」「こちょこちょが好き」など、みんなの「好き」はさまざま。子どもたちは、やってみたいことも話します。そして、「おばさんもそうでしょ?」とたずねます。
子どもたちの「すき」を知ったおばさんは、子どもたちにどう答えたと思いますか?また、おばさんのおうちからの帰り際に、子どもたちがおばさんに言い残した言葉は何だったと思いますか?
私は、この最後の場面のおばさんと子どもたちとのやりとりを読むたびに、おばさんと祖父が重なり、幸せな気持ちになります。4歳の子どもたちの幸せな感覚は、ずっとずっと心に大切にしまわれていて、未来の世界を幸せにしていく原動力になるのかもしれませんね。
今まさに4歳の君にも、ちょっと大きくなったあなたにも、子育てを振り返っているお父さんお母さんにも、お孫さんとの日々を楽しんでいらっしゃるおじいちゃんおばあちゃんにも、年齢に関係なく楽しんでいただける作品だと思います。それぞれに何かを感じていただくことのできる、絵本の力を感じるおすすめの一冊です。
今回ご紹介した本
『4さいのこどもって、なにがすき?』
作:ウィリアム・コール
絵:トミー・ウンゲラー
訳:こみや ゆう
好学社
profile
芳野仁子(よしののりこ)さん
子どもの本とおもちゃの専門店「からすのほんや」店主。雑誌や新聞で絵本や子育てに関するコラムを執筆するほか、子育てに関する講座の講師も務める。
小学生対象のフリースクール「みんなのおうち」、考える力を楽しく養うキッズスクール「ひみつの国語塾」を運営。「一般社団法人 家庭教育研究機構」代表理事。
からすのほんやホームページ
http://karasubook.com/