正しいケアで、乳幼児の虫歯を防ごう 第2話:ケアグッズの選び方と正しい歯磨きをマスター
第1話では、「ふたつき子ども歯科」の院長・二木昌人(ふたつきまさと)先生に、乳幼児の歯の健康を保つ上で知っておきたいことや、虫歯を防ぐポイントなどについて教えていただきました。今回は、虫歯から乳幼児の歯を守るために大切な歯の磨き方を中心にお話を伺います。
1日1回の歯磨きなら、夜寝る前がベスト
虫歯を防ぐためには、やはり食事の後にその都度、歯を磨くことが効果的な気がしますが…。
二木先生:
「仮に1日1回だけ歯を磨くとしたら、夜寝る前がベストです。私たちの口の中は唾液の自浄作用によってある程度は清潔に保たれていますが、夜、寝た後は唾液の分泌が減ってしまい、虫歯菌が活動しやすくなるからです。
朝食後や昼食後も磨くに越したことはありませんが、虫歯予防が目的なら夜に磨くほどの効果は期待できません。その分、寝る前にしっかり磨いてあげることが大切で、1回3分を目安に歯磨きをしてあげる習慣をつけるといいですね。
自分で歯磨きができるようになった乳幼児には、親御さんの仕上げ磨きを欠かさずに。当院に来られる親御さんには、徐々に頻度を減らしながらでも、小学校3〜4年ぐらいまでは親御さんが仕上げ磨きをしてあげるようお願いしています」
知っておきたい、歯ブラシと歯磨き粉の選び方
歯ブラシや歯磨き粉はどのようなものを選べばいいのでしょうか?
二木先生:
「歯ブラシは、ブラシの毛が短めで密度が高いものがおすすめです。ブラシが歯と歯茎の間に入りこんで汚れを落としますから、毛先は細いほうがいいですね。
ブラシの柄の部分は、ある程度しなるもののほうが磨きやすくていいと思います。“音波歯ブラシ”と呼ばれている電動タイプのものは、磨き方に特別なコツも必要なく、まんべんなく汚れを落としてくれるので私も来院するお子さんにおすすめしています。
歯磨き粉に関しては、前回もお話しした通り、虫歯予防に大きな効果が期待できるフッ素入りのものが虫歯予防に効果的です」
歯ブラシを小刻みに動かして磨く。奥歯は斜め45度の角度で
ブラッシングの上手な方法を教えてください。
二木先生:
「まず歯ブラシの握り方ですが、ペングリップと言ってえんぴつと同じような持ち方が基本です。ブラッシングは、歯ブラシの毛先が歯と歯茎の間に当たるように意識しながら、力を入れずにやさしく磨いてあげます。磨き方のポイントは横磨き。歯ブラシを左右に小刻みに動かします。まずは奥歯の磨き方から。奥歯は写真1のように上から、次に2のような要領で、歯の内側も斜め45度の角度で磨きましょう。
ひと昔前はブラシを上下させる縦磨きが推奨されていましたが、汚れが落ちにくいことから、現在は横磨きが正しいとされています。
ちなみに、乳幼児期をすぎて、自分で歯を磨けるようになる小学生くらいのお子さんによくあるのが、前歯や、奥歯の永久歯が磨けていないパターンです。このような磨き癖を直すために、生えて間もない永久歯を意識して磨くようにさせてください」
前歯は上の歯を中心に。かみ合わせの部分まで入念に
前歯の磨き方と、親が乳幼児に歯を磨いてあげる際の注意点を教えてください。
二木先生:
「前歯を磨く場合は写真3のような要領で、上の歯を中心に。4のように歯と歯茎の間にブラシを当てることを意識してください。下の歯は歯ブラシを歯の上にかぶせて軽くブラッシングする程度で構いません。
乳幼児の場合は前歯の裏側もそこまで汚れないので、前歯の裏側を神経質に磨く必要はありません。まだ口が小さいため、特に奥歯は頰の内側が邪魔して磨きにくいと思います。親御さんが口の中に指を入れて頰の肉を押し上げるようにして、かみ合わせの部分まで奥歯をきちんと磨いてあげてください。
親御さんからのご相談で、お子さんが歯磨きを嫌がったらどうすればいいかという相談を受けることがありますが、これはある種の本能です。できるだけ虫歯になりやすい部分を集中的に、短時間で磨いてあげましょう。ブラッシングの力が強いと痛がるので、軽い力の横磨きを小刻みにするのがポイントです。
磨く側が気合を入れすぎている場合もあるので、リラックスして話をしたり、歌を歌ってあげたりしながら磨いてあげると良いと思います」
デンタルフロスの併用も必須
先生は、第1話でデンタルフロス(糸ようじ)の併用が欠かせないことをおっしゃっていました。
二木先生:
「そうですね。虫歯を防ぐためには歯ブラシだけではなく、デンタルフロスもおすすめします。
虫歯予防の場合は、フロスは歯と歯の間に通すだけで効果的。のこぎりのように動かすことで、歯間に入りやすくなります。歯間ブラシは歯茎を傷つけることがあるので、フロスの方がおすすめです」
治療の前にしっかり話をしてくれる歯科医を選びましょう
最後に、良い歯医者さんの選び方を教えてください。
二木先生:
「端的に言えば、治療の前に、まずは保護者にきちんと説明をする、そして何より、お子さんの食生活や歯にまつわる日常生活をしっかり聞いてくれる歯科医がいいでしょうね。
患者さんは虫歯や何らかの悩みがあって来られるわけですから、その部分の話をきちんと聞いた上で、親御さんにわかりやすく治療の内容を説明してくれる、そんなお医者さんを選んでください」
2話にわたって、乳幼児の歯のケアについてお話をお聞きしました。知っているようで知らなかった歯についてのあれこれ、参考になったのではないでしょうか。やはり専門医のお話は、興味深いものがありますね。
健康な体には健康な歯が欠かせません。小学生以降の子どもの歯のケアに関しても、時期をみて紹介したいと思います。
profile
二木昌人(ふたつき・まさと)さん
ふたつき子ども歯科院長・歯学博士。九州大学病院小児歯科講師、ニューヨーク大学小児歯科客員講師、福岡県立糟屋新光園(肢体不自由児施設)非常勤歯科医師などを経て、ふたつき子ども歯科を開院。テレビ西日本の子育て情報番組「はぐはぐ」に出演中。
・ふたつき子ども歯科
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