楽しい発見がいっぱい!夏休みの外遊び 第2話

楽しい発見がいっぱい!夏休みの外遊び 第2話

夏休み。子どもたちにはこの時期でしかできない、楽しい思い出をつくってほしいですよね。1話に引き続き、「筑豊の自然を楽しむ会」の岸本×太(きしもとばった)さんとパートナーの成本麻衣子(なるもとまいこ)さんに、外遊びの楽しみ方についてお話を伺いました。今回は野山を歩きながら楽しみたい、具体的な“遊び方”について教えていただきます。

歩きながら楽しめる、自然とのふれあい方(音を楽しむ)


まだ小さな子どもたちは、ただ目的地に向かって歩いているだけでは、すぐに飽きてしまいます。そんなことがないように、大人が道すがら自然の中で遊ぶヒントを教えることが大切だと岸本さんは言います。

岸本さん:
「前回、五感を使って楽しみたいということをお話ししましたが、その一つである聴覚、つまりいろいろな音で子どもたちの関心を引く方法があります。例えば、クズの葉はコップ状に折り曲げて上から叩くと“ポン”という音が出るんです。その時、これはクズの葉だという説明をしなくても『“ポン”という音がするから、これはポンポン草だね』なんて話をしてあげると子どもたちはとてもおもしろがってくれます。

例えば、ススキを見つけたら、その両側を裂いて、親指と親指の隙間から吹くと、ヒュッというユニークな音がします。キジ笛と言いますが、これもなかなか楽しいですよ」

歩きながら楽しめる、自然とのふれあい方(植物を味わう)


岸本さんは、「ササやタケの仲間やヨモギ、ミツバなど、普段私たちが口にする植物なら、実際に少量を口に入れて味わってみるのもいいですよ」と話します。その代表的なものを紹介してもらいました。

岸本さん:
「ササの新芽を引き抜いて、その付け根の白っぽい部分を噛んでみると、柔らかく筍っぽい味がします。

ミツバも柔らかいものは天ぷらやおひたしにできますから、ちょっと口に入れて味を確認してみては。日本のハーブと言われるヨモギは、味だけではなく香りもいいので、嗅覚もしっかり使って楽しむことができますよ。煎ってお茶にすることもできる植物ですから。

ただし、植物を口に入れる際は、親御さんが十分注意してあげてください。中には食べられないものもありますし、汚れている場合もありますから。自然観察会などで案内する人が一緒なら、必ず確認してもらうようにしましょう」

生き物を探して観察してみる


外遊びに詳しい岸本さんは、野山を歩いていると、植物だけでなく、次から次に虫をはじめとした生き物も見つけます。

成本さん:
「野山には本当にたくさんの生き物がいます。でも、その一つひとつの名前を覚える必要はありません。見つけて観察してみたら、意外に顔がかわいいとか、動作に特徴があるということを子どもたちが感じて覚えてくれればいいと思います。

むしろ、正式な名称より、自分だけにわかる“あだ名”のようなものでいいでしょう。例えばヤモリのことを、九州ではカベチョロと言いますが、その動きからして、まさに言い得てますよね。私はむしろカベチョロという名前をつけた人の方がすごいと思う。それこそが教養というものではないかと。だから、積極的に自分だけの名前をつける子がいたら、それはとても素晴らしいことだと考えています」

歩きながらアクセサリーを作るのも楽しい


成本さん:
「最近は植物でリースのようなスワッグ(壁飾り)づくりも流行っているようです。植物に興味がある子なら、その材料となる草花を探して、実際に作りながら歩くというのも楽しいと思いますよ。おしゃべりなんかしてリラックスした気持ちで。夏場はスワッグにちょうどいい草花などもたくさん見つけられますから。親と一緒にスワッグを作るという思い出も同時に持ち帰るのもいいものです」

スマートフォンを使った、今どきの楽しみ方も


思い出を持ち帰るといえば、今の方が昔よりも気軽にいろいろな楽しみ方ができるのではないかと成本さんは言います。

成本さん:
「昔は夏休みの宿題で、植物や虫の標本作りを経験したという方もいらっしゃるかもしれません。けれども、これはちょっとハードルが高いので、スマートフォンのカメラでそうした生き物を撮影し、家に帰ってからプリントアウトして写真を並べてみるのも面白いですね。外遊びをしたという思い出づくりにもなりますし、自分の行動記録としても使えます。自分でつけた名前を記しておくのも一つの方法。写真だから、図鑑に載っている名前を家に帰ってから調べてもいいでしょう。

ヨモギの話をしましたが、木綿の布に挟んで叩くと茶色に染まります。草木染めですね。乾燥させてお風呂に入れてもいいですね。一度、外遊びを経験すると、このように帰ってからもいろいろな楽しみ方ができますよ」

親子での外遊びの楽しみ方、いかがだったでしょうか? 親自身が植物や虫などのことに詳しくなくても、きっかけさえ与えてあげれば、子どもたちは外遊びを目いっぱい楽しむことができるんですね。夏休みにはぜひ、準備をしっかりして、外遊びに出かけてみてください。

profile

岸本×太(きしもとばった)さん(写真左)
本名・岸本博和(きしもとひろかず)。自然観察会「蟲愛會(むしめづるかい)」主宰、「筑豊の自然を楽しむ会(ちくぜんらく)」代表。大阪府出身、京都大学農学部卒業。20数年前に福岡に移住後、予備校や塾で教鞭をとりながら、愛してやまない自然の世界を子どもたちに広めるべくさまざまな活動を開始。自然観察会とワークショップを行う自然体験プログラムを実施、里山再生なども手がけている。著書に『高校生物とっておき勉強法(ブルーバックス)』(講談社)がある。飯塚市在住。

成本麻衣子(なるもとまいこ)さん(写真右)
「蟲愛會(むしめづるかい)」主宰、「筑豊の自然を楽しむ会」事務局兼企画担当。大阪府出身、大阪大学外国語学部卒業。認定ワークショップデザイナー。岸本さんと共に福岡に移住後、保育園に務め、子どもたちにむしや自然とのふれあいの楽しさを伝える活動を行う。現在、飯塚市の自然体験プログラムの運営、企画に携わり、自然体験を中心としたワークショップの開発を行う。