オトナが読んでもタメになる!子どもにすすめたい、進化した児童書

オトナが読んでもタメになる!子どもにすすめたい、進化した児童書

身の回りの“不思議”にこたえる科学系の読みもの、幅広く親しまれている伝記やビジュアルブック…。時代を超えて子どもたちを魅了する児童書の世界も、時流にのってどんどん進化しています。そこで、前回に引き続き、ジュンク堂福岡店の副店長・福田雄克(ふくだたけかつ)さんに、ロングセラーの児童書の中から、特におすすめの8冊を選んでいただきました。子どもはもちろん、大人たちをも惹きつけてやまないおそるべし児童書。その魅力とは?

読みやすく、凝ったビジュアルのものがいろいろ


福田さん:
「最近の児童書は、子どもたちの活字離れに歯止めをかけるという意図もあって、読みやすくて凝ったビジュアルのものが増えているようです。『子どものために買ったにもかかわらず、大人がハマって読んでしまった』というお客さまからの声もちょくちょく耳にしますね。
今回ご紹介する本は、売れ筋であると同時に、僕自身も個人的に気に入っているものばかりです」

子どもの「なぜ? どうして?」にこたえてくれる科学の本

『なぜ? どうして? かがくのお話』シリーズ 著/コスモピア 監修/大山光晴(学研プラス)

福田さん:
「子どもから、『なぜ? どうして?』などと日常的に受ける質問に的確に答えるのは、多くの親御さんにとって至難の技ではないでしょうか。そんな時のためにおすすめしたいのがこの本。『どうして虹ができるの?』『バナナに種はあるの?』など、多くの子どもが考えるであろう素朴な疑問に、わかりやすい説明とイラストで楽しく答えてくれる1冊です。

親子で一緒に読むのもおすすめですが、いきなりやってくる子どもの”質問タイム“のために、あらかじめ親が読んでおくと、『さすが!何でも知ってる!』ということで、子どもたちから尊敬の目を向けてもらえるかもしれません(笑)。
『なぜ? どうして?』シリーズは、他にも学年別に宇宙、社会などいろいろなジャンルがあります」

新しい、次世代のヒーローやヒロインを取り上げた伝記

『集英社版 学習漫画 世界の伝記NEXT』シリーズ(集英社)
(写真左)『ダイアナ 世界で最も愛された悲劇のプリンセス』        
原著/東園子 監修/和田奈津子 解説/君塚直隆   
(写真右)『スティーブ・ジョブズ コンピュータで世界を変えた情熱の実業家』
原著/堀ノ内雅一 著/八坂考訓 監修/桑原晃弥   

福田さん:
「伝記ものは、親御さんが子どもに読ませたい本として不動の人気です。中でもこのシリーズは、『NEXT』というタイトル通り、いわゆる歴史上の偉人の、その次の世代や現代で注目を集めたダイアナ妃やスティーブ・ジョブズなども取り上げられていて、王道の伝記とはまた違った面白さや興味深さがあります。漫画なので読みやすく、それぞれの知られざるエピソードやドラマティックな人生は、きっと大人も夢中になるのでは?
その人物が幼少期にどのような志を持っていたか、夢を描いていたかなど、子どもが大いに刺激を受ける内容もしっかり盛り込まれています。

このように、取り上げる人物が変わったという点で、伝記にも確実に新しい波がきているようです。ちなみに、同じ伝記ものの『小学館版学習まんが』にはなんと、くまモンが取り上げられているんですよ(笑)」

読書習慣を身につけられる!短い時間で読める、伝記や名作集

(写真左)『新装版 齋藤孝のイッキによめる!名作選 小学1年生』 編集/齋藤孝(講談社)
(写真右)『10分で読める伝記』シリーズ 監修/塩谷京子(学研教育出版)

福田さん:
「これらのシリーズは、読書の習慣のない子どもでも気軽に手に取れて、いつでもサラッと読めるということでも注目されています。
齋藤孝さんの「イッキによめる!名作選」シリーズは、宮沢賢治や芥川龍之介といった文豪の読み物に加えて、さくらももこや筒井康隆などの小説も収録。短編集なので、最近の多くの小学校で取り入れられている朝の読書にもおすすめです。

『10分で読める伝記』は、小学校の学年ごとに、そのレベルに応じた12人の偉人の人生を簡潔にまとめたものです。子どもが活字に親しんだり、気になる人物をさらに他の伝記などで深掘りしたりと、本に目覚める突破口にもなるのではないでしょうか」

身近な生き物の生態を、わかりやすいビジュアルで紹介

『クモ(やぁ!出会えたね4)』著・写真/今森光彦(アリス館)
『アリのくらしに大接近』著/丸山宗利 写真/島田拓、小松貴(あかね書房)

福田さん:
「この2冊は身近な生き物にスポットをあてた、かなりクオリティの高いビジュアルブックです。
『クモ』は、昆虫写真の第一人者である今森光彦(いまもりみつひこ)さんがコガネグモについて綴った本。クモって、よく見かけるものの、その生態についてはほぼ気にとめていないですよね。その脱皮のシーンや子グモが産まれる瞬間などを捉えた写真はかなり印象的で、心を打たれるものがあります。

一方の『アリのくらしに大接近』は、九州大学の准教授である丸山宗利(まるやまむねとし)先生が、アリの生態にとことん迫った本。アリの巣に居候する生き物を専門に研究されているという丸山先生ならではの視点で、巣の中でアリがどんなふうに暮らしているかを迫力ある写真と文章で紹介した、かなりレアな1冊です。
例えば、アリは巣の中でキノコや菌を育てるなどの農業に従事しているとか、餌となる生きものの牧場を作っているとか、奴隷として使うために他のアリを狩りに行くとか…。小さなアリたちの、驚くべき偉大な生態に夢中になること間違いなし!です」

お話を聞いているだけで、その内容にグイグイ引き込まれてしまう福田さんによる児童書の紹介、楽しんでいただけましたか?
今やネットであらゆる情報がスピーディーに得られる時代。でも、だからこそ、自由にページをめくりながら想像力を膨らませて楽しむ本は、子どもの成長の大きな糧にもなるはずです。さまざまな魅力に満ちた読書の世界を、ぜひ親子で味わってみてください。

profile

福田雄克(ふくだたけかつ)さん

福田雄克(ふくだたけかつ)さん

ジュンク堂福岡店副店長。児童書および理工書担当。
ジュンク堂福岡店/福岡市中央区天神1-10-3 メディアモール天神地下1F〜4F
電話/092-738-3322
営業/10:00〜21:00
定休日/1月1日(年末年始は営業時間変更あり)